イギリスのロンドン大学と米ビンガムトン大学の研究者が96カ国、5705人を対象に「失恋の痛手」を調査。被験者のうち75%は別れの経験があり、そのうち75%は複数回の失恋経験者です。そこに見られたのは、男性よりも女性のほうが、別れた直後に精神的なショックが大きいという特徴でした。

ところが女性の場合、自分の傷を癒やす時間を設けると、比較的あっけらかんとその傷から回復できるようです。昔ほど、別れや離婚が女性の不利な条件にはならないことも作用して、悩み、耐えるより別れてしまったほうがすがすがしいのかもしれません。

対する男性は、未練を引きずりがち。「男は強くなければならない」とばかり、世間から落ち込むことを許されません。男性は失恋状態によっては10年たってもまだ傷を引きずり続けるというわけで、まさに「男はつらいよ」な状況です。

文化人類学が専門のクレッグ・モリス氏は、女性は「過去の恋愛経験を過去のもの。もう終わったこと」と語れるのに対し、男性にとっては「終わりを迎えた話ではなく、常に会話に葛藤が見られる」と話しています。

ある60代男性は、女性と別れて40年たってもまだ彼女との会話を思い浮かべたり、恋愛感情がぶり返したりすると話していました。彼女に浮気され、別れた後もときどき体がマヒしたような感覚に襲われた人もいるようです。げに、打たれ強きは、女性なのでしょうか?

では、「別れてよかった」と気持ちを切り替えるのが上手なのはどちらでしょう? 答えは女性。女性が別れて少しすると「いまだに彼を思い出すと嫌な気持ちになる」や「ほとんどネガティブな感情しか残っていない」と、むしろ“別れてよかった”といった気持ちに切り替わります。

片や、男性は生物学的にも子孫を繁栄させるため、パートナー選びも次から次へ…なんて思いがちですが、心と体は裏腹のよう。悔しい思いをして別れたとしても、別れた後は女性の気持ちのほうがスッキリ、のようです。

パソコンのファイルで例えれば、男性は別名保存、女性は上書き保存で、過去の思い出を処理していくのです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。