米エモリー大学の研究によると、睾丸(こうがん)が小さい父親のほうが子育てに気持ちが傾きやすく、睾丸が大きい男性ほど、自分の子どもの写真を見せられた時の反応が「小さい」傾向にあることが分かりました。動物を対象とした過去の研究でも、性ホルモンが少ないオスは繁殖行動は少ないのですが、その分、子育てに費やすエネルギーが増えるという報告があるようです。子どもを、夫と一緒に優秀に育てたい女性は、睾丸の小さい男性を見つけたほうがいい、ということでしょうか?

睾丸のサイズと健康の関係性について実施された調査は、ほかにもあります。イタリアのフィレンツェ大学の研究チームが、7年間に及ぶ調査を行い、明らかにしました。同チームは、何らかの性機能障がいにより医者にかかっている男性患者2809人のデータを調べ、彼らの睾丸サイズも測定。その後、7年間かけて被験者たちの健康状態を記録し続けました。

すると、睾丸のサイズが大きい人ほど、「心臓病」を患いやすいことが判明したのです。また、そのような男性は高血圧で肥満傾向にあり、酒飲みである人が多かったということです。

睾丸の大きさは、しばしば生殖能力の高さと関連付けられますが、大きい人は、「黄体形成ホルモン」の値も高いことが多いと報告されています。黄体形成ホルモンは、睾丸の細胞を刺激して男性ホルモンの分泌を促す役目を担っています。研究チームは、「この黄体形成ホルモンによる男性ホルモンの分泌の高まりが心臓に悪影響を及ぼしている可能性がある」と指摘しているのです。大きい睾丸がもたらすものは、良いことばかりではない? ようです。

現時点で、睾丸のサイズが及ぼす影響について、分かっていないことも多いのですが、将来的にはその大きさを見れば、他の病気の早期発見も可能になるかもしれません。また、今回は性機能障害を患った患者のみが対象となっており、今後のさらなる研究が不可欠とのこと。

ただし、1つ重要なことは、「大きい睾丸」というのが実際のところ、どれくらいのサイズなのか、研究チームは明らかにしていないという点です。今後は、「どれくらいだと大きいのか」についても、はっきりさせていく必要がありそう、です。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。