「がん探知犬」を、ご存じですか? 人間の呼気や尿の臭いで早期がんを発見する犬です。山形・金山町では、この探知犬を利用した健康診断が行われています。これは、同町のある地区の胃がんによる女性の死亡率が、全国ワーストとなったことから、状況打開のため導入されたのです。

元来、犬は人の100万倍~1億倍以上の嗅覚を持つといわれ、足跡追及能力や臭気選別能力を有した「警察犬」「麻薬探知犬」、地震などで被災し、生き埋めになった人の臭いをかぎ分ける「救助犬」、イタリアでは高価な「トリュフ・ハンター」としても活躍しています。

犬の中でも、狩猟犬として嗅覚の発達したゴールデンレトリバーが特殊な訓練を受け、探知する使命を担います。何でも、1頭育てるのに、500万円ほどの費用がかかるということですから、その訓練のいかに大変か、がうかがえます。しかも、17年時点では国内で働く探知犬は5頭しかいないようです。

訓練を受けた犬は、良性の腫瘍には反応せず、がん患者が出す呼気や尿から、がんの有無をかぎ分けるといわれています。特に、子宮がん(尿のにおい)、大腸がん(呼気)においては、9割以上の確率で判別できるのだといいます。

どういう流れで探知させるか、というと、まず犬にがんの臭気を嗅がせて、尿を箱の中にセットし、その近くを歩かせます。がんのない判定の場合は、そのまま素通りしますが、がん判定の場合は、その箱の前で立ち止まり、振り返って知らせたりします。

研究機関の調べでは、的中率は100%近いといわれます。金山町の場合は、町の健康診断を受けた人で、探知犬による検査に同意した人の尿を冷凍し、千葉県内にある医療機関に送り、調べます。ちなみに、探知犬を利用しての健康診断について、同町関係者からは「早期発見ができ、治療費も抑えられる」と好評のようです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。