突然ですが、問題です。

「○○の臭いで、がんがわかる!?」。さて、○○のなかに入るのは何でしょう? 正解は、なんと、「おなら」です。

名古屋大学工学部の八木伸也教授が、がん細胞が壊死(えし)するときに発生したガス「メチルメルカプタン」が、おならに含まれている、という研究結果を発表したのです。メチルメルカプタンは、腐ったタマネギの臭いがする、無色の気体で、おならの悪臭成分の1つ。

同大の研究によると、大腸がんの患者のおならから極端に多い量のそれが、検出されたそうです。大腸がんの早期発見は、通常難しいとされますが、それが可能になるかもと、注目されています。おならを袋にためて、金属との反応を見て、判別するのだといいます。

おならは、口からの空気と腸内で食べたものが分解されるときに発生するガスが、混ざり合ったもの。その回数が増えたり、臭くなったりすると、どこかに原因があるのですが、がんもわかるとすれば、鼻をつまんでいるだけでは、大事なことを見逃してしまうことになります。

以前に、犬が、がんの臭いを探知することに触れましたが、果たして、がんは臭うのでしょうか?

何と、「線虫」による、がん識別研究も進んでいます。こちらは九州大学などの研究チームが行っているもの。土や水の中にいる、体長1ミリほどの線虫には、犬と同じ程度の約1200種の嗅覚受容体があるそうです。

その「鼻が利く」線虫に人の尿の臭いをかがせ、がんの有無の判定を行います。実験は、シャーレを2つ用意し、それぞれの左側のバツ印に、健康な人とがん患者の尿を置きます。そして、2つのシャーレの真ん中に線虫100匹を放すのです。

すると、左側が健康な人の尿、右ががん患者の尿として、健康な人のほうは線虫が散らばり、がん患者のほうは線虫がどんどん集まっていくというのです。線虫のこの性質は早期のがん患者の尿でも変わらないとかで、胃がんや乳がん、大腸がんなどを見極められるということです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。