最近発表された米国とフランスでの研究によって、ほくろの数が多いほど、乳がんリスクが上昇する可能性があることが分かりました。まず、米国は「看護師健康研究」という調査で、24年間に7万4523人の女性看護師を追跡、5483人が「浸潤性乳管がん」を発症したというのです。

左の肩から手首までの直径3ミリ以上のほくろの個数を自己申告してもらったところ、ほくろの数が15個以上の女性では、ほくろがない女性に比べ乳がんになるリスクが1・35倍高かったというのです。

これは、ほくろも乳がんも、女性ホルモンと密接な関係があるからだと思います。

2つめは、「E3N」という40~65歳のフランス人女性を対象にした研究です。18年間に8万9902人の女性を追跡したところ、5956人が乳がんを発症し、「非常に多くの」ほくろをもつ女性は、ほくろのない女性に対して13%乳がんが増加したのです。

妊娠中にほくろの色が濃くなったり、大きくなることから、ほくろと血中ホルモンの変化の関連が指摘されてきました。また、ほくろの数はほくろのがん(悪性黒色腫)の危険因子であり、悪性黒色腫と乳がんの関連を指摘した報告もあります。

これらの研究の結論は、乳がんのタイプなどについて相違点があるものの、その発生について、示唆に富むものといえるでしょう。

ほくろでいえば、「ほくろをえぐると、がんになるのでは?」と、よく聞かれます。でも、そんなことはありません。ほくろは、元々がんでないものが多く、がんでないものをえぐったり、触ったりすることでがんになるわけではありません。刺激を与えたからがんになるというわけではなく、元々悪性の細胞をもって成長するのが、ほくろのがんです。

ほくろが、急に大きくなってきたり、足の裏や、手の裏に7ミリ以上のものがあったり、色に濃淡があったりすれば、悪性黒色腫の可能性が高いといえ、注意が必要です。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。