身体のにおい、体臭は自覚していないことが多く、他人から言われることも少ないので、意識してないうちに迷惑をかけていることも多いのではないかと思います。

「体臭」は、実は年代別に発生源が違い、においの種類も違ってきます。男性の、10代半ばから30代半ばまで、体臭の主体は「汗臭」のことが多く、その発生部位は左右の脇からで、酸っぱいにおいがします。

30代半ばから50代半ばには、後頭部を中心に「腐った油」のようなにおいが特徴の「ミドル脂臭」が出ます。これは汗から発生します。汗の中の乳酸という疲労物質が、細菌により分解されると、「ジアセチル」というにおいの原因となります。ジアセチルは、量こそあまり出ませんが、少量でも耐えられないほど、においます。しかも、他のにおいをより強くするから、たちが悪い! 汗から出たジアセチルが、皮脂から出るにおいと一緒になり、よりにおいを強くするのです。そのにおいたるや、周囲の人の集中力低下につながりかねないほどです。

50代半ば以降になり、本格化するのが、「加齢臭」。それは、古い本、ローソク、枯れ草のようなにおいです。どれも、落ち着いたにおいで、けっして不快なものではありません。しかも年を取ると誰にでも現れる生理現象、加齢現象といえます。それでも、生活習慣病の人、若くてもメタボの人から出る加齢臭は、不快な強いにおいがします。

加齢臭のもとになるのは、ノネナールという成分で、それが出る主な部位は、頭、首、胸、背中など、体毛のあるところのあぶらを出す、皮脂腺からです。よく「耳の後ろからも出る」と言われますが、そこには毛がありませんから、耳の後ろから加齢臭は出ていないことになります。汗がベトベトしている人は脂肪酸が多く、その分、ノネナールが強くなります。毛深い人も皮脂腺の分泌が盛んで、加齢臭が強くなります。加齢臭に先のミドル脂臭が一緒になると、もう最悪です。

一方、女性は、更年期を過ぎ女性ホルモンが低下すると、相対的に男性ホルモンが強くなって加齢臭が出るようになります。男性よりはタイミングが遅れますが、女性も加齢臭が出るということなのです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。