最近の研究で、主要28カ国中で日本人の睡眠時間が最も短いことが分かりました。それによると、男性が6時間30分(主要28カ国平均=7時間7分)。女性が6時間40分(同=7時間26分)でした。

ちなみに睡眠時間が最長だったのは男性がフィンランド、女性はフィンランドとベルギーでした。日本人と比較すると男女ともに1時間前後の差がありました。

国内外の研究によると、最も長生きできる睡眠時間は「7時間」と考えられています。名古屋大学大学院などのグループが、日本人約11万人の睡眠時間を調べたところ、約7時間寝る人の死亡率が最も低く、それより長くても、短くても、死亡率が高くなることが、約10年間の追跡調査で分かりました。

厚労省の調査で「年齢によって理想的な睡眠時間が異なる」という報告があります。10代前半までは8時間以上、25歳で約7時間、45歳で約6時間半、65歳以上で約6時間というものです。

若年世代(10代前半まで)は寝ている間に成長ホルモンが出るため、たくましく育つために十分な睡眠時間が必要。寝床での携帯電話やゲーム機使用はそれを妨げるため、注意が必要。

25~45歳の勤労世代の場合、睡眠不足は疲労や心身の健康リスクを上げるだけでなく、作業効率の低下や事故などの危険性を高めることもあり得ます。休日の寝だめは、月曜朝の目覚めの悪さにつながるだけに、ご法度です。

高齢者(65歳以上)は、これまで8時間睡眠にこだわっている人が多かったのですが、無理に長い時間眠ろうとすると、逆に睡眠が浅くなって夜中に目が覚めたり、熟睡感がなかったりで、6時間が適切です。

睡眠には「レム(浅い)睡眠」と「ノンレム(深い)睡眠」があり、前者は身体的に眠っているのに、脳が活動している状態。入眠時にはノンレム睡眠が現れ、続いて1時間から2時間ほどでレム睡眠に移ります。以降、両者が交互に現れ、レム睡眠はほぼ90分おきに20~30分続きます。夢を見るのは、多くはレム睡眠中。夢の内容を覚えているのは、この期間に覚醒した場合なのです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。