寝坊で遅刻する人、よく見掛けますよね。その人の言い訳は、たいてい「低血圧なんだよね」。しかし、実は、低血圧だから朝起きられない、ということはないのです。

低血圧の症状として、めまいや立ちくらみがあります。それらの症状が混同されて、何となく、「寝起きが悪い」と勘違いされてしまったのです。しかし目覚めの良しあしと血圧は特に関係なく、目覚めに大きく関わっているのは、自律神経です。

自律神経は、リラックスしたり寝ているときは副交感神経が優位に、昼間起きて活動しているときは交感神経が優位になっています。このスイッチの切り替えがうまくいかないと「寝起きが悪い」という状態になるわけで、「低血圧だから」とか「高血圧だから」は関係ないのです。

ですから、寝坊して遅刻する人は、「低血圧だから」という言い訳はできず、あえて言うなら「自律神経の切り替えがうまくいかないから」と、説明すべきなのです。

規則正しい生活、適度な運動、バランスのよい食生活を心がけることで、この切り替えをスムーズにすることができます。

睡眠の質を高めるには、青魚の摂取が大事とされます。青魚のDHA(ドコサヘキサエン酸)は、中性脂肪を減らす、認知症予防などで有名ですが、2014年にオックスフォード大学の研究で、DHAの新たな効果が発見されました。それが、睡眠持続効果と睡眠の質の向上です。DHAを16週間にわたって600ミリグラムとった児童群と、とらなかった児童群とを比べると、前者は一晩あたりの睡眠時間が約1時間も延び、しかも途中で目が覚める回数も減って、より深い睡眠が得られたという結果が得られたのです。

DHAは、睡眠ホルモンと呼ばれているメラトニンの元となる物質のはたらきを高めることで、メラトニンの分泌を促進しているのではないか、と考えられています。「DHA600ミリグラム」というのは、マイワシなら刺し身3切れ分に相当し、毎日とるのには、決して難しくない量といえます。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。