NPO法人「アルコール薬物問題全国市民協会」の分析で、飲酒運転の検挙事例を調べたところ、「飲酒後時間をおいて運転していた」ケースが、4割近くあったということです。別のデータでは、体重60キロの人の場合、ビール(350ミリリットル)2本を飲んでアルコールが血中から消えるのに、4時間半ぐらいかかるということで、深夜まで深酒したら、仮眠、休息を取ったとしても翌日の午前中までアルコールが体内に残っており、そんな状況での運転は危険極まりません。

飲酒運転の取り締まり基準は、「酒酔い運転」が「まっすぐ歩けないなど、酔った状態で運転すること」。一方、「酒気帯び運転」は、「酒に酔った状態でなくても、一定基準以上のアルコールを体内に保有して運転すること」を指します。肝心なのは、お酒の量ではなく、お酒を飲んだことにあるわけです。

また、ノンアルコールビールですが、アルコール度数が1%未満で酒税法上「酒類」に属さないビール風味の飲み物を言います。完全なアルコール0%のものから、0・1~0・9%のアルコールを含んでいるものまでさまざまです。0%なら飲んでもアルコールは検出されませんが、微量のアルコールを含んでいる商品を短時間に大量に摂取して運転すると、酒気帯び運転、酒酔い運転にあたる場合があります。

一方、適度のお酒にはリラックス効果、ストレス発散効果があり、人と人との距離を近づけるなどのメリットもありますが、最近の研究では、認知症の発症リスクを下げることもわかっています。厚労省によると、ビールなら1週間に中びん1~6本でリスクが2分の1に。フランスのボルドー大学によると、ワインを1日グラス3杯でリスクが4分の1なるといいます。

でも、逆に、飲みすぎると認知症のリスクを高めてしまいます。フィンランドのヘルシンキ大学の調査によると、月に1回以上、飲んで騒ぐ経験のある人はリスクが3倍以上に。また、年に2回以上酔いつぶれる経験がある人は、リスクが10倍以上になるのだそうです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。