大リーグに20年ぶりの「スイッチ・ピッチャー」が現れた。アスレチックスの左右両投げ投手、パット・ベンディット(29)が5日、傘下3Aからメジャーに昇格。同日に敵地ボストンで行われたレッドソックス戦でデビューした。95年のエクスポズ(現ナショナルズ)ハリス以来となる両腕での投球を披露し、2回を1安打無失点と好投した。

 ベンディットは7回から4番手で登場した。まずは左打ちのホルトを相手に、左投げで応戦。フルカウントからスライダーで一ゴロに打ち取った。この後は右打者が続くため、特注のグラブを持ち替えて右投げにスイッチした。ラミレスに安打を許したものの、ナポリを二ゴロ併殺打に仕留め、この回を3人で切り抜けた。

 続投の8回は、右投げで簡単に2死を取った後、「両投げ対両打ち」という注目の顔合わせも実現した。打席にスワイハートを迎えたベンディットは、グラブを右手にはめて左で投げるそぶりを見せた後で、右投げを選択した。スワイハートは困惑した表情を浮かべ、球審が慌ててマウンドへ確認に走る。結局、「右投げ対左打ち」で始まった勝負は、ベンディットに軍配が上がり、外角への変化球で空振り三振に。圧巻の3者凡退で意気揚々とベンチへ引き揚げた。

 本来は右利きのベンディットは、3歳の時に左でも投げ始めたという。プロ入り後も両方を磨き続け、マイナー生活8年目の今季は3Aナッシュビルで17試合に登板し1勝0敗、防御率1・36の好成績だった。ようやくチャンスをつかんだ苦労人は「どちらか一方で投げようが、両方で投げようが関係ない。自分はチームが勝つためにここにいる」と、力を込めた。メルビン監督も「彼は実力でここまで上がってきたんだ」と、貴重な戦力であることを強調した。

 ◆ルール変えた男 実はベンディットの登場で野球規則に新たなルールが加わったいきさつがある。ヤンキース傘下1Aに所属していた08年、両打ちのエンリケスと対戦。ベンディットは、エンリケスが右打席に入ったのを見て右で投げようとするとエンリケスは左打席に…。こんなやりとりが続いたため審判は打者に打席を選択するよう指示した。これがきっかけで、投手が対戦前に左右のどちらかを明らかにしなければならないという規則が作られた。

 ◆日本のプロ野球では 1軍登板したのは88年に南海に入団した近田豊年だけ。同年4月14日ロッテ戦に登板し、1回1安打1失点。下手投げの右でも投げられたが、利き腕の左だけで投球した。1軍登板はこの1試合だけ。他に両投げ投手は吉成昭三(巨人)野崎進(ヤクルト)がいたが、1軍登板はなく、登録はいずれも右投げだった。

 ◆高校野球では 昨年、所沢商(埼玉)の増田一樹投手(当時3年)が注目された。最後の夏は計3試合に出場し、左投げで投手を、右投げで左翼手をこなした。甲子園出場はならず。

 ◆漫画では 人気野球漫画「ドカベン」に登場する愛称「わびすけ」こと木下次郎(赤城山高)は、投球モーションに入るまで左右どちらで投げるかが分からなかった。