政界地獄耳

【政界地獄耳】環境相はプライドと謝罪の気持ちがあるなら辞任すべき 

★1956年に水俣病が見つかり、70年に内閣に公害対策本部が設置され公害という言葉が広がった。環境庁として発足したのが大阪万博の翌年、1971年。環境省の原点は水俣病と言っていい。76年、環境庁長官で初入閣した石原慎太郎は翌年、水俣病の患者施設を視察。患者に抗議文を手渡され、会見で「これを書いたのはIQが低い人たちでしょう」「補償金が目当ての“偽”患者もいる」と発言。結果、患者の前で土下座して謝罪した。

★1日、熊本県水俣市で行われた環境省主催の水俣病患者らで作る団体との懇談会で、被害者の発言中に環境省職員がマイクを切って制止した問題。マイクを切ったことを環境相・伊藤信太郎は「認識していない」ととぼけたが、各局のテレビカメラの前で患者らに対しての対応はお粗末すぎた。今回の伊藤と司会をしていた同省特殊疾病対策室長・木内哲平の振る舞いは石原以来の蛮行と言える。伊藤は今回の対応が不適切だったとして、同省次官・和田篤也と環境保健部長・神ノ田昌博に対し口頭で厳重注意をしたが、7日、官房長官・林芳正は「不快な気持ちにさせてしまったことは適切な対応ではない」。首相・岸田文雄も「関係団体の皆さまを不快にさせる不適切な対応だった」と素早い反応を見せた。政府与党が政治とカネで厳しい時に余計なことをしでかしたと官邸の怒りはすさまじく、木内の謝罪で済ませようとしていたが8日、大臣自ら謝罪に出向いた。

★伊藤は元衆院議長・伊藤宗一郎を実父に持ち、慶応義塾大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了、ハーバード大学大学院修士課程修了、「CNNデイウォッチ」キャスターなどを歴任。英、仏、伊、中国語が堪能というエリート。「当選7回で初入閣は遅いとみる向きが多いだろうが、プライドが高く主要閣僚以外は受けないと豪語していた」(自民党同僚議員)。懇談の冒頭、伊藤は「水俣を訪れ、皆さまのお話を伺うことができる、重要な機会と感じている」とあいさつしたが、プライドと謝罪の気持ちがあるなら辞任すべきだ。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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