よく「眠れない時、羊の数を数えれば眠れる」と言われますが、これは「ウソ」。残念ながら、英語圏以外の人がこれをやっても、効果はありません。羊の数を数えるのが、睡眠につながるとされているのは、欧米から来た文化で、英語のシープ(SHEEP=羊)とスリープ(SLEEP=眠り)が発音もつづりも似ているところから、きています。

 英語の場合、「ワン・シープ」「ツー・シープ」と数える時、「シー…」の発音が、深呼吸となって睡眠を導く効果があるとも考えられています。日本語の場合は「羊が1匹」「羊が2匹」…と言っても、全く深呼吸にならないので、効果はありません。ならばと、英語で言おうとすれば、逆に神経が高ぶることにもなりかねません!?

 睡眠の質を高める食材としては、青魚がいいでしょう。青魚のDHA(ドコサヘキサエン酸=不飽和脂肪酸の1つ)は、中性脂肪を減らすことや認知症予防などで有名ですが、14年に英オックスフォード大学の研究で、DHAの新たな効果が発見されました。それが、睡眠持続効果と睡眠の質の向上です。

 DHAを16週間にわたって600ミリグラム取った児童群と、取らなかった児童群を比べると、前者は1晩あたりの睡眠時間が約1時間も延び、しかも途中で目が覚める回数も減って、より深い睡眠が得られたという結果が得られたのです。

 DHAは、睡眠ホルモンと呼ばれているメラトニンのもととなる物質の働きを高めることで、メラトニンの分泌を促進しているのではないか、と考えられています。ちなみに、DHA600ミリグラムはマイワシで刺し身3切れ分に相当し、毎日取るには、決して難しくない量なのです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。