ブロークンハート症候群は、東日本大震災などの震災時に、患者数が増加する病気です。

失恋や愛する人を亡くしてしまった強いストレスが原因でも生じ、いわゆる心筋梗塞による心不全と同じような症状が見られます。しかし、死亡率は高くありません。また、一般的に女性に多い、とされています。“ブロークンハート”と聞くと、何だかロマンチックなイメージを起こさせますが、実際は全く違います。

強い圧力を感じ、目まい、冷や汗、胸の痛みが生じます。またの名を「たこつぼ心筋症」と言い、心臓の先が膨らんだ状態になってしまい、たこつぼのような形に見えるのです。この心筋症は通常、何かトラウマ的な出来事が起こった後に発症します。感情的に非常に大きな衝撃を受けた、または、ストレスを非常に感じる状況が原因と考えられます。

確認されてから年月は浅いものの、病気そのものは昔からあったようです。その時は心筋梗塞などによる心不全とされても、以降、精密検査を行うにつれ、何かが違うということに医師が気づき始めたのです。

何か、感情的にひどく衝撃を受けた時、体が反応。通常アドレナリンのようなホルモンが普段以上に分泌されます。過度のアドレナリン分泌は、心臓に影響を与え、その左心室は短期的に変形し、「コーン」状になるという病気です。

同症候群の権威の1人、米ジョン・ホプキンス大学のイラン・ショア・ウィッツステイン医師は、女性にとってこの病気を防ぐ方法として、次の5点を挙げています。

(1)特に、閉経後はストレスに対処する方法を見つける。1日2時間を自分のために使う。瞑想(めいそう)したり、自分が抱える「小さな問題」の処理を行う(2)心臓の筋肉をより強く、弾力を持たせるため、毎日30分間のエクササイズやウオーキングを行う(3)いい友だちを持ち、誰かの支えになる話を聞いてもらっていることは健康には欠かせないと理解する(4)赤や紫、オレンジ色といった抗酸化作用の豊富なフルーツ、野菜を摂取する(5)定期検診を怠らず、コレステロール値、血糖値、血圧、体重に気をつける

そのうえで、家族だけではなく、自分自身のこともいたわるべきと、諭しています。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。