日本人と肩こりには、密接な関係があります。厚生労働省の調査では、「生活のなかで不快に感じている症状」のなかで、肩こりは、男性が腰痛に次いで2番目、女性はトップです。日本人全体でも、約8割が首や肩のこりに悩んでいるといわれます。

「五十肩」といわれるような肩関節周囲炎や頸椎(けいつい)症などのように原因がある場合もあれば、いろいろと調べてみても、原因がわからない肩こりもあります。肩こりを悪くする要因としては、精神的ストレス、姿勢の悪さ、運動不足、寝不足、過労、眼精疲労などが挙げられています。

首や肩がこるのは、重い頭を支えているため。頭の重さは約5キロほど。ボウリングの球を載せているようなもの。しかも頭を傾けると、3倍以上、20キロほどの負荷がかかるといわれます。

また、スマホやパソコンの普及にともない、首や肩にこりを訴える人も少なくありません。スマホを長時間利用することによって引き起こされる症状は「スマホ症候群」と呼ばれ、首や肩のこりだけはなく、頭痛やめまい、しびれを訴えることもあります。これは首の骨の変形である「ストレートネック」につながります。

間違った姿勢でパソコンを操作していると、肩や首に負担がかかり、いつまでたっても肩こりが治りません。肩がこる姿勢として、あごを突き出している、肩に力が入っている、首の後ろが縮んでいる、などが挙げられます。正しい姿勢は、深く腰掛け、腹の下(丹田)に力を入れる、頭が糸で引っ張られているさまをイメージする、などです。

また、日本人とは対照的に外国人は肩がこらない、と言われます。欧米人に比べ、日本人には「リラックスして働く」という意識が少なく、それがストレスとなって、こりにつながっている、と見る人がいます。逆に欧米人はストレスをためない働き方をするタイプが多い、というわけです。

一方、日本人の首から肩の骨格や筋肉のきゃしゃな造作を、肩のこりやすさとして指摘する整形外科の先生もいます。こりのほぐし方でも、日本人は強い力でツボを指圧したり、もみほぐしたりする方法を好むのに対し、欧米人はオイルマッサージや足の裏を優しくマッサージするリフレクソロジーなどを好む傾向があるようです。文化や風習の違いもまた、肩こりに関係しているのかもしれません。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務める。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。