学校体育館の暑さを社会課題として可視化し、解決を目指す「脱!サウナ体育館プロジェクト」が6日に始動し、東京・渋谷区でプレス発表会が行われた。
バドミントンの元世界王者、桃田賢斗とバレーボール女子の元日本代表、益子直美さんと大山加奈さん、モデレーターとして井本直歩子さんが登壇。「全国の小中学校体育館に『断熱と空調』を!」と呼びかけた。
賛同する6競技団体の1つ、バドミントンと空調の関係について、桃田は自身の熱中症経験もまじえながら語った。
「シャトルは5グラムしかなくて風の影響を強く受けるので、体育館を締め切ります。外より暑くなる上に、風の出にくい空調設備は高額で、一般的な空調ではコートによって有利不利が生じます。このコートでなければ勝てた、という試合が増えかねない。安全と公平性のバランスが難しい」と現状を明かした。
続けて、福島・富岡高1年の時に出場した沖縄インターハイで、熱中症になった記憶を打ち明けた。「空調の効いたメインアリーナに進む前の会場で1日4試合を戦い、ファイナルゲームの4試合目は、ほとんど記憶がない。(水分を)飲んでも汗が止まらず寒気がするほどで、当時は知識もなく、朦朧(もうろう)としながら試合をしていました。『これだけ練習してきたのに』という悔しさが残りましたね」と振り返った。
地方体育館の現状については、井本さんが調査結果を説明。空調なし、気温35度以上を計測した体育館では、指導者の53%に熱中症等の対応経験(緊急搬送の事例も複数)があることなどを提示した。
小中体育館の空調(冷房)設備設置状況も、トップ東京都の95・6%に対し、最下位の佐賀県は0・8%と約120倍もの地域格差があった。
益子さんは「空調のある体育館は増えてきました」としつつ「スポーツ少年団が使う学校には、まだ少ない。少年団ではWBGT(暑さ指数)31以上は活動しないルールを設けており、夏休みに思い切りスポーツができない。空調があっても予算の都合で『一瞬つけて切る』ような運用で、時短しながら対応している」と紹介した。
大山さんも「今夏、バレーボール教室を依頼された自治体で『市内に空調のある体育館が一つもない』と言われて衝撃を受けた。自分が数十年、続けている夏のバレーボールキャンプも空調なしの会場。ここ数年は夏の開催をやめるべきなのか、楽しみにしている子供たちを思うと葛藤している」と吐露した。
課題は、機会損失にも広がる。井本さんが「空調なしの体育館で失われた時間は約7時間、空調ありと比べて約4倍」のデータを示す。桃田は、進路にも影響があることを懸念した。
「夏は大事な大会が多い時期。そこで力を出し切ることができれば、希望の高校、大学、チームに進めるはずが、自分ではどうしようもない暑さで練習できない。もどかしい。完全な平等は難しいとしても環境を整えてほしい」と訴えた。
大山さんも、自身の子が来春に小学校へ上がるため学校見学に行ったという。「空調があって安心した」と率直に語りながらも「なければ心配。子供は楽しいと体の異変に気付けず、休みたがらず、状態を言葉にする力もまだ弱い。チームでは一人ひとりを見続けることも難しく、環境から変える必要がある」と指摘した。
冷房設置だけでなく、同時に「断熱」化を進めることの重要性も提示。桃田は「断熱で空調に頼らずに済むなら、風はないほうがいいバドミントンにとって非常に助かる」と話す場面もあった。最後は現場に対しても「指導者の方々には、子供の異変をよく見てほしい。子供たちも、周りが言わないから我慢するのではなく、危ないと思ったら声を出していい。無理しない範囲で夢を目指してほしい」と呼びかけていた。
■「脱!サウナ体育館プロジェクト」が目指すこと
(1)猛暑でも安心してスポーツができる体育館へ
(2)「冷やす」前に「熱を入れない」を当たり前に
(3)住む場所で差が生まれない避難所へ


