平昌パラリンピックの開幕まで今日9日で1年と迫った。韓国北東部の江原道が舞台となる障がい者スポーツの冬の祭典は、アジアでは98年長野大会以来2度目の開催。高校時代に18歳以下のラグビー女子日本選抜に選出された本堂杏実(20=日体大)は、アルペンスキーで平昌大会出場を目指す。昨年10月に本格的に競技を始め、パラリンピックとラグビー女子日本代表入りの“二刀流”に挑む。

 右指はアルペンスキーW杯(長野)仕様のネイルに、ばっちりメークの本堂が平昌大会への思いを口にした。「先が見えない恐怖もあるけど、絶好のチャンス。自分の可能性を信じて完全燃焼したい」。

 先天性左全手指欠損の障害がありながらも5歳でラグビーを始めた。主にSHで力強いタックルと右手1本から出す精度の高いパスを武器に小4から関東ユース選抜、高3の時には18歳以下の日本選抜に選出された。「日本代表になってラグビーW杯に出場したい」。そう思い、強豪の日体大へ進学した。

 昨年2月、大学側からパラリンピック競技への打診があった。高校時代にスキー検定2級を習得し、慣れ親しんだアルペンスキーに挑戦することを決意した。旗門の間隔が狭い技術系の回転と大回転を軸に、同8月から代表の「次世代育成選手」として欧州の大会を転戦。ラグビー生活からもいったん離れ、先月のIPC国際大会(スロベニア)では大回転で3位、今月5日のアルペンスキーW杯では4位入賞を果たすなどの急成長を遂げている。体のバランスを保つために、左手には400グラムの重りを付けてストック1本でコントロールする。

 今後は強化指定選手に選ばれて、来季のW杯などの国際大会で上位の成績を残せば平昌への道も見えてくる。「平昌が甘くないとは分かっているけど、一度決めたらやる。負けず嫌いなんです。目の前は平昌、その先はラグビーの日本代表。やりたいことがいっぱい」。過酷な状況でありながらも、楽しんでいるかのように本堂は言った。【峯岸佑樹】

 ◆本堂杏実(ほんどう・あんみ)1997年(平9)1月2日、埼玉県所沢市生まれ。東京・日体桜華高から日体大へ進学。先天性左全手指欠損でありながら、父親の影響で5歳からラグビーを始める。高3の時、関東選抜(7人制)で「サニックスワールドユース大会」優勝、18歳以下の日本選抜にも選出された。趣味はネイルとサンリオのキキララグッズ集め。好きな俳優は西島秀俊。家族構成は両親、姉、弟。152センチ、55キロ。血液型O。