距離男子10キロクラシカル立位で新田佳浩(37=日立ソリューションズ)が金メダルを獲得した。銀メダルのスプリント・クラシカルに続く表彰台で、2冠の10年バンクーバー大会を含めて自身3個目の金メダルとなった。6大会連続出場の「レジェンド」は肉体改造と家族の支えを力に世界王者に返り咲いた。大会は今日18日午後8時から閉会式が行われ、10日間の熱戦が幕を下ろす。

 新田佳はゴールするとストックを持つ右腕でガッツポーズして、雄たけびを上げた。スタート直後の転倒で「冷静になれた」と、前へ前へ力強く滑走した。「今回は諦めずに滑れば結果はついてくると信じていた。準備の結果だと思う。良かった」と胸を張った。

 肉体改造と家族の支えを力にした。15年から国立スポーツ科学センターで週3回、「爆発的なパワー」を出すため下半身を強化。標高2800メートルに設定した低酸素室での自転車トレーニングで体を鍛えた。丸太のように太い脚は健常者のアルペン選手並みになった。

 連覇を狙った14年ソチ大会はメダルを逃した。帰国した成田空港では、長男大翔くん(7)が自分で作った折り紙の金メダルをかけてくれて、男泣きした。「次は本物の金メダルをかけてあげたい」。年間200日以上、遠征や合宿で家を空けた。次男健翔くん(4)も誕生し、妻の知紗子さん(41)に子育てなどで迷惑をかけた。「妻も4年間耐えてくれた。結果で恩返しするしかない」。こう決め、37歳で臨んだ今大会は「過去最強の状態」と自負した。

 この日の朝は、家族からの手紙を読んで泣いた。同じ部屋でスノーボード・バンクドスラローム金メダルの成田緑夢(24)とは「勢い」をもらうために抱き合った。心技体を最高の状態にして6度目の大舞台に臨んだ。家族が見守る中、「かっこいいお父さん」を見せた。「4年間で家族に迷惑をかけた。苦しくて逃げたい時もあったけど、いろんな人に支えられた。自分は本当に幸せ者」。夜のメダル授与式で8年ぶりの金メダルを手にした。子どもたちには帰国後、かけてあげる予定で「この日をずっと待っていた」とすっかり父親の顔になっていた。【峯岸佑樹】