「巨人の主将」とは、何か。/阿部慎之助×坂本勇人のクロストーク

阿部慎之助と坂本勇人。「巨人の主将」という中道を歩んだ2人にしか見えない風景を、7年前の対談から探ります。(2015年1月25日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

巨人阿部慎之助内野手(35)&坂本勇人内野手(26)の、新旧主将クロストークを送ります。グアム自主トレ帰国の直前に実現した「禅譲式」。グラスを傾ければ坂本の緊張も徐々に解け、キャプテンとは、の核心に迫っていきます。

15年1月、ガッチリと手を握って、笑顔を見せる前主将の巨人阿部と新主将の坂本

15年1月、ガッチリと手を握って、笑顔を見せる前主将の巨人阿部と新主将の坂本

阿部が部屋の窓を開けた。波の音に乗せて「勇人、ちょっとこっちで話そうか?」と、太い声で呼び掛けた。坂本がテーブル席に腰を掛けた。旧主将は、氷がギッシリ詰まった焼酎グラスを口元に運び「もうグアムで一緒にやって8年になるんだな」と切り出した。

坂本はひどく緊張していた。未熟な自分を自主トレに誘ってくれた恩人。チームを引っ張る姿も間近で見てきた。行動をともにする機会は意外に少ない。リビングルームに少しの間、緊張感が漂った。

黙っていては、始まらない。坂本に代わって、第一声を発した。

──今の坂本の姿を想像できたか?

阿部 想像なんかできないよ。鳴り物入りで入っても、活躍できるかどうかわからない世界。でも、勇人は高卒1年目で1軍に上がって、大事な場面で初安打が決勝打。何か持ってるな、って思ったね。

──どのあたりが成長したのか?

阿部 野球人としても、人間としてもしっかりしてきた。18歳から見てるけど、一緒にやってる人間が成長していくのはうれしい。

15年1月、グアム自主トレのフリー打撃で3球連続柵越えした巨人坂本

15年1月、グアム自主トレのフリー打撃で3球連続柵越えした巨人坂本

阿部の目を見て、うなずくばかりだった坂本。照れくささを押し隠すようにグラスを傾け、話し始めた。

坂本 信じられないんです。野球人生で1度もキャプテンをやったことのなかった僕が、ジャイアンツのキャプテンなんて…。

阿部 俺だって、今の自分は全く想像できなかった。勇人は今年で27歳か。俺がキャプテンになったのは28歳の時だったんだけど、一番心掛けたのは、年上の人といかにコミュニケーションを取るか、だったな。

坂本 どういうふうにやられてたんですか?

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