【「のぞき」の実態】表沙汰にならない疑惑の数々 証拠を録画し突き付けると…謝罪

現場取材歴が長いベテラン記者が、さまざまな角度からサイン盗みを考察します。連載第11回で解き明かすのは「のぞきの実態」。知られていないだけで、プロ野球でも実は多くの…。(2019年5月22日掲載)

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★紛らわしすぎる行為

プロ野球界では「サイン盗み」を「のぞき」と呼んでいる。一般社会でも「のぞき」と聞けば「卑劣」「姑息(こそく)」といった悪い言葉を連想するだろう。悪いと分かっていても、なぜ「のぞき」がなくならないのか。背景を紹介していきたい。

今季も「のぞき疑惑」があった。得点圏打率の高い打者が打席にいる時に、走者の動きをマークしていると、捕手が動くのを見て、動く方向に膝を曲げ、打者に教えるような動作をしていた。

守備側のチームが、ベンチから大声を出してヤジったが、指摘された走者は「いつもやっているクセですよ」といった様子で、捕手の動きに関係なく、その後もピクピクと膝を動かしていたという。

この程度なら「疑惑」であり、笑い話で済む。しかし数年前には、紙一重で表沙汰にならなかった疑惑もあった。

直球とフォークボールの2種類しか投げない中継ぎ右腕が登板。三塁コーチが、球種によって打者側に向いたり、投手側を向いたりしていた。確か1イニングで18球ぐらいを投げ、三塁コーチが向いていた方向と違った球種は1球だけ。違っていた1球は、投手が首を振ってすぐに投げたものだった。

かねて「のぞき疑惑」があったチームだけに、相手チームが三塁コーチの動きを録画。証拠を見せて抗議すると、相手球団は紛らわしい行為があったと認めて謝罪し、表沙汰にはならなかった。

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。