【書き下ろし&復刻】「嫌われた監督」著者・鈴木忠平が描く勝負の世界〈4〉岩瀬仁紀

「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」で2022年の各賞を総なめにした、ノンフィクション作家の鈴木忠平氏。書き下ろしの「随想録 鈴木忠平」第4話は、NPB最多登板と最多セーブ記録を保持する左腕に迫ります。「死神の鎌」と恐れられたスライダーを操り、勝負の幕を下ろし続けた男の心根。機微を逃さない筆者の洞察力が光ります。日刊スポーツに在籍当時の、雄健な筆致がにじみ出た貴重なハイライト原稿もご一緒に。充実のバックナンバーとともに、卯年のスタートをじっくりとお楽しみください。(所属、年齢などは当時)

プロ野球

◆鈴木忠平(すずき・ただひら)1977年(昭52)千葉県生まれ。名古屋外国語大学を卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。中日、阪神などプロ野球担当記者を16年間経験したのち退社し、文藝春秋Number編集部に所属。現在はフリーのノンフィクション作家として活動している。「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(文藝春秋刊)でミズノスポーツライター賞、大宅壮一ノンフィクション賞、本田靖春ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。最新刊に「虚空の人 清原和博を巡る旅」(文藝春秋刊)がある。

岩瀬仁紀が現役を引退する。そのニュースを目にしたのは2018年の初秋のことだった。通算1002試合に登板して407セーブ。どんな投手よりも多くの試合に投げ、誰よりもウイニングボールを投じてきたストッパーも44歳を迎えようとしていた。そういう意味では驚くことではなかった。ただ、ひとつだけ胸に引っかかることがあった。

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1977年千葉県生まれ。名古屋外国語大学を卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。中日、阪神などプロ野球担当記者を16年間経験したのち退社し、文藝春秋Number編集部に所属。
現在はフリーのノンフィクション作家として活動している。「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(文藝春秋刊)でミズノスポーツライター賞、大宅壮一ノンフィクション賞、本田靖春ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。
最新刊に「虚空の人 清原和博を巡る旅」(文藝春秋刊)がある。