【興南―中大―ソフト―興南コーチ・島袋洋奨】凛として謙虚…変わらない/連載〈2〉

雑誌「輝け甲子園の星」などで春夏50回以上の甲子園取材を続ける〝ヨシネー〟こと保坂淑子記者が、当時の球児たちに会いに行く「ヨシネー‘sメモリー」。第2回は、2010年に興南(沖縄)のエースとして甲子園春夏連覇を達成した島袋洋奨さんです。「トルネード旋風」を巻き起こした左腕を訪ね、沖縄に向かいました。

高校野球

◆島袋洋奨(しまぶくろ・ようすけ)1992年(平4)10月24日生まれ、沖縄県宜野湾市出身。興南では2年春夏、3年春夏の甲子園出場。独特なトルネード投法から繰り出される力強い直球を武器に、3年時はエースとして史上6校目の春夏連覇を達成。中大を経て、14年ドラフト5位でソフトバンク入団。19年シーズン終了後に現役引退。左投げ左打ち。

【撮影:青山麻美】

【撮影:青山麻美】

興南1年の冬…あれから14年

2008年12月―その年の秋季九州大会で、興南を4強に導いた1年生投手が話題になった。それが、島袋洋奨投手だった。「どんな1年生なのかな…」。ワクワクしながら興南グラウンドに行ったのを、今でも覚えている。目の前に現れたのは、まだあどけなさの残る島袋少年。おとなしくて、少しはにかんだ笑顔が印象的で、質問にも一生懸命に答えてくれた。その後エースに成長し、3年時には春夏連覇を達成。どんなに活躍しても、偉ぶらず。誠実さは変わらなかった。あれから14年。大学、プロと経験し、20年から母校のコーチを務める島袋君を訪ねた。

島袋コーチの声がグラウンドに響き渡る。「もっと前に出て」「1つ1つ確実に」。いつも静かだった島袋君が!? 意外な光景に、呆気にとられていると「僕も大きな声を出しますよ(笑い)。怒るときもありますしね」と、厳しい表情を見せた。そして「たまに冗談も言いますね」とサワヤカに笑った。

――今はどんな仕事をしている?

島袋興南の入試広報という部署で働いています。中学、高校とあるので、もっと興南を知ってもらうために、キャリアパスポートといって、講演会をしているんです。

――講演会!?

島袋はい。僕がこの部署に入ってから「キャリアパスポート」が導入されました。興南をもっとよく知ってもらうために、学校説明会だけでは伝わらないことを、僕の経験談も交えながら話させてもらっています。

――たくさんの人前で話すのは…

島袋小学生や中学生の1学年から2学年。多くて200名~300名。最初は緊張しましたよ。

――マウンドとどっちが緊張する?

島袋え~…人前で話す方です(笑い)。まだマウンドで投げていた方が緊張しないですね(笑い)。

講演会で、夢を追った軌跡を話す。左は2010年夏の甲子園抽選会、注目選手3人での記念撮影。左から開星・糸原健斗(現阪神)島袋、智弁和歌山・西川遙輝(楽天)。右は11年3月4日、卒業式で。ともに作田祥一撮影

講演会で、夢を追った軌跡を話す。左は2010年夏の甲子園抽選会、注目選手3人での記念撮影。左から開星・糸原健斗(現阪神)島袋、智弁和歌山・西川遙輝(楽天)。右は11年3月4日、卒業式で。ともに作田祥一撮影

――どんな話をするんですか?

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秋田県生まれ。
2017年まで、日刊スポーツ出版社刊「プロ野球ai」デスク、「輝け甲子園の星」の記者を務める。〝ヨシネー〟の愛称で連載を担当した。甲子園取材は春夏通算50回超え。
著書に「監督心」、「主将心」(実業之日本社)「東浜巨 野球日誌が語る22年」(小学館)など。