
【インハイ3部作〈下〉】松生理乃 砕けそうな心を救ってくれた親友と並んだ表彰式
フィギュアスケート女子の松生理乃(18=愛知・中京大中京)が、1月16、17日に埼玉アイスアリーナで行われた全国高校選手権(インターハイ)に出場し、合計180・97点で2位となりました。
昨年1月の4大陸選手権で5位に入りましたが、今季のグランプリ(GP)シリーズでは体調不良の影響もあり、表彰台争いに加わることができませんでした。ただ、もどかしい時期が続く中でも、発する言葉には緩やかな変化がありました。
いつも飾ることのない18歳。等身大の姿を描きます。
フィギュア
<インターハイ:女子シングル2位松生理乃>
3日連続で配信! インターハイ3部作アイストーリー
大きく見えた身長150センチの姿
その姿は大きく見えた。
23年1月17日午前7時40分。埼玉アイスアリーナ。
インターハイのフリーへ向け、女子の最終グループが公式練習に臨んでいた。
そこで確かな存在感を放っていたのが、松生だった。
「のびのび滑ろう」
今大会のテーマ通り、しなやかに体を動かし、優雅に舞った。白い息を吐きながら、たくましさと美しさを備えたスケーティングに努めていた。
20分間の練習が終わった直後。
会場を後にする6人の列を眺めていると、そこで初めて気がついた。
リンクで大きく見えていた松生は、最終グループの滑走者で最も背が低かったのだ。
身長150センチ。
これは今季のGPシリーズで、女子シングルとして出場した日本人選手8人の中でも最も小柄になる。
松生は小さな体を指先まで目いっぱいに伸ばすことで、躍動感を生み出していた。
ただ、体格以上に大きく見えたのは、迫力のある滑りだったからという理由だけではない。
GPシリーズでも、全日本選手権でも、表彰台争いへ加わることができなかった今季。発してきた言葉には、心の大きさが表れていた。
胃腸炎でフリー断念したSアメリカ
22年10月24日。米国東部のマサチューセッツ州ノーウッド。
北大西洋に面したボストンで、GPシリーズ第1戦スケートアメリカの女子フリーが開催されていた。
スケートシーズンが幕を開けた中、松生はベッドに横たわっていた。
本文残り81% (3203文字/3941文字)