【カナリア軍団の挑戦】「伝統は手に入らない」雌伏の時を経て帝京あと2勝〈3〉

高校サッカー界の超名門、帝京(東京)が13年ぶりの選手権出場を懸けて戦っている。選手権で戦後最多タイの6回の日本一に輝く「カナリア軍団」は、今夏の総体で準優勝。再び全国の頂点を目指し、歩みを進める。10月23日の東京都予選では多摩大目黒を下し、ベスト4に駒を進めた。高校サッカー取材歴40年、帝京の黄金時代を知る荻島弘一記者による密着ドキュメントの第3回。

サッカー

〈サッカー取材歴40年荻島記者が密着:第3回〉

「この色だよね、やっぱり」スタンドに増えたオールドファン

ユニホームのカナリア色が、人工芝の緑に映える。清瀬内山運動公園で行われた高校選手権東京都予選Aブロック準々決勝。帝京が終盤の連続ゴールで3-0と多摩大目黒を下して、13年ぶりの出場にあと2勝と迫った。

今予選の初戦は、相手チームのユニホームとの関係もあって青色だった。カナリア色を着ての「初戦」。45年前に都予選で帝京と対戦したというスタンドのオールドファンは「この色だよね。やっぱり、帝京は」とうれしそうに言った。

帝京が圧倒的な強さを誇ったのは1970年代から80年代だった。91年度の最後の選手権優勝からも31年、高校総体を最後に制してからも20年がたっている。「強い帝京」は、今の高校生が生まれる前のことだ。

帝京が初めてカナリア色のユニホームを着たのは、70年度の高校選手権。それまでの赤から、選手たちの希望もあって変えた。「本家」カナリア軍団のブラジルが、W杯で3回目の優勝を果たした直後だった。

1984年入社。スポーツ部でサッカー、五輪などを取材し、1996年からデスク、日刊スポーツ出版社編集長を経て2005年に編集委員として現場に復帰。