【小菊昭雄のC大阪を追う〈1〉】香川も兄と慕うプロ経験なし指揮官、統率の流儀

Jリーグ30周年を迎えた今季、舞台は整った。セレッソ大阪監督、小菊昭雄(47)はプロ選手経験のない指揮官。愚直なまでの手腕でチームを優勝候補の一角へと成長させた。さらに教え子、MF香川真司(33)が復帰。小菊だから起こせる奇跡がある。(敬称略)

サッカー

〈プロ選手経験のないJ1指揮官の挑戦〉

2月7日、練習を見る(右から)小菊監督、香川

2月7日、練習を見る(右から)小菊監督、香川

人と向き合い、人を思い、信念を貫く

今年の元日、小菊は生まれ故郷にほど近い、神戸市にある湊川神社で初詣に出かけた。

「みんなが健康に過ごせますように。今季こそタイトルが取れますように」

主祭神は南北朝時代の名将とされる楠木正成。軍記物語「太平記」に「智(正しく理解する力)、仁(思いやり)、勇(行動力)」の三徳を備えていたとある。

小菊にも三徳に匹敵する力がある。人と向き合い、人を思い、監督として信念を貫く力だ。

「リーグ3位以内でアジア(ACL出場)へ、そして(リーグ戦を含め、ルヴァン杯や天皇杯の)タイトルを獲得します」

1月8日の始動日、サポーターの前で宣言した小菊は「私は年男です。ウサギのように、常に前へ、大きく飛躍する年にしたい」という、ちゃめっ気のある言葉も忘れなかった。

自信の源は、サッカー界では異例となる今季のチーム編成だ。一部の外国籍選手こそ退団したが、控え組を含め、ほとんどの日本人選手が残留した。小菊の求心力は異常なほど高い。

「日常がすべて。その競争に勝ち残った選手を私が正当に判断して使う。経験のある選手はリスペクトしながら、新しい選手がよければ当然使うし、そこには年齢や実績は関係ない」

この宣言は、コーチから内部昇格した21年8月以降、何も変わっていない。愚直なまでに競争を促し、MF清武も特別扱いはしない。だから、元日本代表は必死になる。だから、他の選手から不満が出ない。

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スポーツ

横田和幸Kazuyuki Yokota

Osaka

大阪府池田市生まれ。1991年入社。
93年Jリーグ発足時からサッカー担当で、当時担当していた出世頭は日本代表監督になった広島MF森保一。アジアの大砲こと広島FW高木琢也の当時生まれた長男(利弥)を記者は抱っこしたが、その赤ちゃんがJ3愛媛のDFで今秋30歳に。
96年アトランタ五輪、98年W杯フランス大会などの取材を経て約13年のデスクワークに。19年から再びサッカーの現場へ。