エース電撃流出にも不動 C大阪加藤陸次樹を祝福で送り出した小菊監督の度量/連載7

セレッソ大阪監督の小菊昭雄(48)は今夏、日本人エースを突然失った。2年半在籍したFW加藤陸次樹(むつき、26)が悩んだ末、オファーを受けた広島へ電撃移籍した。指揮官はあえて「おめでとう」などの言葉で新天地へ送り出した。信頼で結ばれていた師弟は今、ライバルクラブで新たな道を歩む。(敬称略)

サッカー

〈プロ選手経験のないJ1指揮官の挑戦〉

C大阪在籍当時の加藤(右)と話す小菊監督

C大阪在籍当時の加藤(右)と話す小菊監督

戦力として引き留めも、一方で「うれしく思う」

約3週間のJリーグ中断期間中だった7月21日、大阪市舞洲のクラブハウスで小菊は、広島への移籍を決意した加藤と、1対1で最後の別れを告げていた。その時の思いを、のちに明かしている。

「陸次樹が努力して、勝ち取った移籍なんです。うれしく思います。愛着のあるクラブに戻って、活躍することを願っています」

最後の別れとなる5日前だった。浦和に2-0の完勝で飾った16日の試合後、加藤は小菊に対し「しっかり、練習始動日(21日)まで悩んで、決めたい」と、オフ明けに移籍か残留かの答えを出すと説明した。

だから、最後の場で小菊は、もう引き留めはしなかった。100%の思いで祝福した。

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スポーツ

横田和幸Kazuyuki Yokota

Osaka

大阪府池田市生まれ。1991年入社。
93年Jリーグ発足時からサッカー担当で、当時担当していた出世頭は日本代表監督になった広島MF森保一。アジアの大砲こと広島FW高木琢也の当時生まれた長男(利弥)を記者は抱っこしたが、その赤ちゃんがJ3愛媛のDFで今秋30歳に。
96年アトランタ五輪、98年W杯フランス大会などの取材を経て約13年のデスクワークに。19年から再びサッカーの現場へ。