
平尾誠二に救われてここまで来た 山中亮平、ラグビー日本代表を救う男
一度はどん底にいた男がW杯に戻ってきた。リーグワン神戸のフルバック(FB)山中亮平。日本代表入りは確実と思われながら落選し、1次リーグ第2戦となるイングランド戦で負傷者が出た影響で追加招集された。大会前のインタビューで明かした決意。彼には活躍を伝えたい人がいた。(敬称略)
ラグビー
〈W杯に滑り込んだ男〉
山中亮平(やまなか・りょうへい)
1988年(昭63)6月22日、大阪市生まれ。小学校では本格的に競泳に取り組み、イトマンで五輪銀メダリストの入江陵介と練習に励んだ。大阪・真住中ではサッカー部、2年から友人に誘われてラグビー部へ。東海大仰星3年時に花園で全国制覇。早稲田大では1、2年時に全国大学選手権優勝、4年時は決勝戦で帝京大に惜敗し準優勝。4年時に日本代表に初選出され、10年5月のアラビアンガルフ戦で初キャップを得た。11年に神戸製鋼(現コベルコ神戸スティーラーズ)入り。19年W杯日本代表。スーパーラグビーに参戦したサンウルブズのメンバーで、今年8月にW杯メンバーから落選後は英国の選抜チーム「バーバリアンズ」に招集された。188センチ、98キロ。
W杯まさかの落選一転、追加招集でフランスへ
W杯から落選するとは、誰が予想していただろう。
それほど、日本代表の中心にいた選手だった。
8月15日にあったW杯フランス大会のメンバー発表。
彼の名が呼ばれることはなかった。
それはサプライズとして報じられる。
少し大げさかも知れない。
それでも、ふと思い出す出来事があった。
日本サッカーが初めてW杯に挑んだ1998年。
直前にメンバーから外れたのはカズだった。
語り継がれる衝撃の事実。
カズはレマン湖の畔にあるスイスのニヨンから、イタリアを経由して帰国した。髪を銀色に染めて。
四半世紀が過ぎ、山中もまた、髪を銀にした。
偶然は重なる。
あのW杯も、今回と同じ開催地はフランスだった。
25年前と違うのは、カズは最後までその地を踏むことはなく、山中はフランスで戦うことになったこと。
1次リーグ2試合が終わり、追加招集という形で。
どうしてもW杯で日本を勝利に導きたいという、強い思いがあった。
自分のためだけではない。
支えてくれる家族へ。
そして恩人へ。
それは大会前のインタビューで明かしていた素直な胸の内だった。
本文残り79% (3615文字/4551文字)

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈15〉世界一のチア!帝京大学が3冠達成~黄金時代到来の予感
150秒にかける青春〈15〉世界一のチア!帝京大学が3冠達成~黄金時代到来の予感 大学女王の帝京大学「Buffalos」…
益子浩一
-
ラグビー
【伏見工業の今】消えゆく校舎 復活の足音とともに京都工学院に受け継がれる精神
【伏見工業の今】消えゆく校舎 復活の足音とともに京都工学院に受け継がれる精神 40年以上が過ぎた今、あの頃の光景は変わり…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈14〉大学女王から世界の女王へ「世界で一番いいチームに」
150秒にかける青春〈14〉大学女王から世界の女王へ「世界で一番いいチームに」 チアリーディングの世界選手権・シニア女子…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈13〉コロナで閉ざされた千葉明徳の夢…世界選手権でつながっ…
150秒にかける青春〈13〉コロナで閉ざされた千葉明徳の夢…世界選手権でつながった希望 世界選手権(11月23~26日、…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈12〉1400人が涙した GOLDEN BEARS優勝報告…
150秒にかける青春〈12〉1400人が涙した GOLDEN BEARS優勝報告会 1991年創部の箕面自由学園チアリー…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈11〉ナショナルチーム西日本、高校生を中心に目指す世界一
150秒にかける青春〈11〉ナショナルチーム西日本、高校生を中心に目指す世界一 チアリーディングの世界選手権が国内で開幕…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈10〉帝京大チア、情熱の指導者と歩んだ悲願への軌跡
150秒にかける青春〈10〉帝京大チア、情熱の指導者と歩んだ悲願への軌跡 今夏のジャパンカップ日本選手権でディビジョン1…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈9〉箕面自由「応援したい…」原点に触れ世界へ向かう秋
150秒にかける青春〈9〉箕面自由「応援したい…」原点に触れ世界へ向かう秋 チアリーディングの原点は「誰かのために応援す…
益子浩一
-
ラグビー
帰ってきた平尾誠二“最後の教え子”「失敗してもええねん」命日を前にかみしめる言葉
帰ってきた平尾誠二“最後の教え子”「失敗してもええねん」命日を前にかみしめる言葉 「ミスター・ラグビー」と呼ばれた人の教…
益子浩一
-
ラグビー
W杯を断たれた世界のSOクエイド・クーパーは言った「陽はまた昇る。次へ進もう」
W杯を断たれた世界のSOクエイド・クーパーは言った「陽はまた昇る。次へ進もう」 彼は、W杯にいるべきはずの選手だった。た…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈中学編下〉世界V剥奪騒動、練習ボイコット…乙女たち成長の階…
150秒にかける青春〈中学編下〉世界V剥奪騒動、練習ボイコット…乙女たち成長の階段 箕面自由学園中学に「Jr.BEARS…
益子浩一
-
ラグビー
平尾誠二に救われてここまで来た 山中亮平、ラグビー日本代表を救う男
平尾誠二に救われてここまで来た 山中亮平、ラグビー日本代表を救う男 一度はどん底にいた男がW杯に戻ってきた。リーグワン神…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈中学編上〉危機乗り越え…“妹”にも受け継がれる日本一の精神
150秒にかける青春〈中学編上〉危機乗り越え…“妹”にも受け継がれる日本一の精神 「GOLDEN BEARS」の妹が「J…
益子浩一
-
ラグビー
ジャパン最後の日、平尾誠二が残した思い「いつかゴール前でスクラムを。そんな代表に…
ジャパン最後の日、平尾誠二が残した思い「いつかゴール前でスクラムを。そんな代表に」 ラグビー界の伝説となる平尾誠二が、日…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈番外編1〉あまりに尊い1シーン、メンバー外の部員が起こした…
150秒にかける青春〈番外編1〉あまりに尊い1シーン、メンバー外の部員が起こした奇跡 ジャパンカップ日本選手権を目前に控…
益子浩一
-
ラグビー
“最後のサムライ”が語る真相 なぜ日本ラグビーは世界で勝てなかったのか
“最後のサムライ”が語る真相 なぜ日本ラグビーは世界で勝てなかったのか 日本ラグビーが、世界に歯が立たない時代があった。…
益子浩一
-
その他スポーツ
150秒にかける青春〈動画編2〉潜入!箕面自由学園チア日本一の日常&360度体験
150秒にかける青春〈動画編2〉潜入!箕面自由学園チア日本一の日常&360度体験 ジャパンカップで4連覇を達成した箕面自…
益子浩一
-
ラグビー
【ラグビー激動の1995〈6〉】「戦犯」増保輝則に問う 日本が歩む道は正しいのか
【ラグビー激動の1995〈6〉】「戦犯」増保輝則に問う 日本が歩む道は正しいのか 1995年度はラグビー界が大きく動いた…
益子浩一