野球界の変化の必要性を語る田尾安志氏

　それにしても、最近のプロ野球を見ていると、観客数が気になるね
　そうなんですよ。今年のサッカーは、ものすごく盛り上がっているでしょう。もちろん、僕もファンで観戦しました。だから野球界の動向が気になるんです。例えば日本サッカープロリーグ元年の１９９３年（平５）は父（長嶋茂雄氏）が再度、巨人監督に復帰した年なんですね。野球がサッカーファンに呑み込まれてゆくようで、野球界の行く末をものすごく危惧（きぐ）して、勝手な対抗意識を燃やしたんですよ。サッカーがいやが上にも盛り上がって。
　だからね、これからの野球界も変わっていかないといけないなと、思うんだよね。僕も監督をやらせてもらって、改めて野球ってファンの存在があってこそ成り立っているって。地元のファンが本当に温かくチームを応援してくれた。ファンが今、何を求めているのか、その判断を野球界だけで決めてはならない。勝つことと、ファンへの対応は別に考えなければならない。　
　だんだんプロ野球中継が減ってきて、この傾向は今年だけではなく、来年、再来年と続くと思いますよ。ファンの人にいかに球場へ足を運んでもらうか。キーポイントになるのは「市民球団」。これを目指すべきなんですよ。地域密着、これこそが野球界の進む道ですね。
　ただ勝てば良い、大物選手を集めて、強いチームを作れば良い、と言うわけでもない。自分のチームで選手を育てる、これがベストの方法なんです。僕の監督時代の話に戻るけど、あの時の僕の考え方は、強いチームを作ることより、いいチームを作ることに専念したんです。いいチームならば、アマチュアからいい選手が集まる。その結果、チームが強くなる。「いいチーム」とは何か、その考え方に熟慮が要るけれど。