陸上女子短距離の鈴木くるみ(旭川龍谷2年)が日本代表入りへ、奮闘している。日本協会が1月に公募した400メートルリレー日本代表候補選考会に参加。選ばれた9人中最年少、北海道勢では唯一、代表候補入りした。16日からは第2次合宿(東京)に参加。5月の世界リレー(神奈川)代表をつかみ、その先の世界選手権、東京オリンピック(五輪)切符を目指す。

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最年少の日本代表候補となり、鈴木の日の丸への思いは変わった。「今までは全然遠い存在と思っていたけど(代表候補に)選ばれて意識するようになった。東京五輪とかに自分も日本代表で出たいなというのは、より一層強くなった」。伸び盛りの女子高生スプリンターは、世界リレー、その先にある大舞台に思いをはせた。

実現には、険しい道が待つ。日本女子が東京五輪のリレー出場権を獲得するには、日本記録43秒39を更新するタイムが必要となる。そのため、1月の選考会は個人種目より、リレーに重きを置ける選手を集めることでチームの底上げ、強化を図る目的で行われた。

雪国の選手には不利な時期の開催だったが、鈴木は「日本のトップのアスリートが集まる。挑戦して見ようと思った」。170センチの長身を生かした大きなストライドで後半に伸びる走りが特長。昨年の総体100メートルで7位入賞も、自己ベスト11秒77は参加32人中14番目。直前に沖縄で調整し、当日は30メートル走と120メートル走で納得の行く走りができたが「まさか選ばれるとは思っていなかった」と振り返る。

選考会後に右足甲を疲労骨折し、1月下旬の第1次合宿はバトンジョグなど軽いメニューが中心だった。それでもロンドン五輪代表の市川華菜(28=ミズノ)らの走りを目の当たりにし、日本代表トレーナーから指導を受け「勉強になることばかりだった。(自身の走りの)前半も後半も課題の部分はたくさんある」と実感。合宿後は、栄養摂取から補強メニューまで、より高いレベルを意識するようになった。

鈴木を含めた9人の当面の目標は、第4次合宿中の3月22日にあるアジア選手権(4月、カタール)出場4選手の選考会を通過することだ。旭川龍谷の練習がオフだった13日、休息に努めた鈴木は「ケガを治して4人に入り、リレーに出られるように頑張りたい」。東京五輪につながる階段を、1歩1歩、踏みしめていく。【浅水友輝】

◆鈴木(すずき)くるみ 2001年(平13)8月1日、上富良野町生まれ。上富良野中1年で競技を始め、3年のジュニア五輪100メートル優勝。旭川龍谷1年のアジアユース日本代表、2年の総体100メートル7位。200メートル自己ベストは24秒89。趣味はドラマ鑑賞で最近のお気に入りは「3年A組」「中学聖日記」。好きな歌手はあいみょん。170センチ、59キロ。家族は両親と兄。

▽道陸協・高橋巧強化委員長の話 今回の選考は個人種目よりリレーを中心に考えていくメンバーを選抜。リレーチームとしてずっとやっていく、死に物狂いで五輪を目指すメンバーを集めましょうということだった。体が大きい鈴木選手は、伸びしろ、可能性が大きい子だと感じている。昨年の総体で決勝に残った(道内)4人のうちの1人で力も十分。将来性とかも見て選ばれたと受け止めています。北海道の女子短距離にとって明るい話題。楽しみです。

◆日本陸連の公募制新プロジェクト 女子短距離の低迷を打開するために初めて実施。日本代表候補は4回の合宿後、最多6大会に出場する。今回の公募制に不参加の選手も、設定タイム(11秒44)を超えた場合は「ワイルドカード」でリレー代表候補入りが可能になる。セレクション不参加の100メートル日本記録保持者・福島千里(30=セイコー)や昨年のアジア大会代表・御家瀬緑(恵庭北高2年)らにもチャンスは残っている。

◆日本女子400メートルリレーの東京五輪への道 64年東京五輪であった開催国枠はなく、地力で出場権獲得が求められる。12年ロンドン五輪は48年ぶりに出場も、その後は低迷が続き、昨年のアジア大会は5位に沈んだ。東京五輪の出場には、開催国枠で出場する5月の世界リレー(神奈川)で10位以内に入り、9月の世界選手権出場権(カタール)を獲得。世界選手権で8位以内に入ることが必要になる。