【ロンドン9日=吉松忠弘】男子テニスで世界9位の錦織圭(28=日清食品)が来年、新たな武器を手に悲願の4大大会、マスターズ制覇に挑む。今年4月ごろから試打を繰り返し、スイートスポットが2・7%広がるウイルソンの“省エネ反発ラケット”が完成。自らが好む柔らかな打球感と、少しの力で球を飛ばすことができる心強い相棒を得ることになった。

錦織オリジナル・ラケットが進化した。14年に球速を約8%アップさせた新兵器を開発し、使用開始時の15年にサーブが念願だった時速200キロを超えた。マイナーチェンジを繰り返しながら今年まで使用した。その基本を受け継ぎ、スイートスポットを広げるテクノロジーを搭載させたニューモデルを作り上げた。

秘密はラケット面の下部にある。ストリングスを通す穴を補強するプラスチックの内部に、反発が大きいクッション部品を使用。錦織のラケットを担当するアメアスポーツジャパンの道場滋氏によると「ストリングスがたわむ量が増え、スイートスポットが約2・7%広がる」という。

打球時の球の接触時間は1000分の3秒といわれる。ストリングスのたわむ量が増え、それが少しでも長くなれば、柔らかな感触に加え、たわむ反発で球も飛ぶ。スイートスポットも広がり、真ん中を外しても球が飛ぶことになる。

11日に始まるツアー最終戦ATPツアー・ファイナル出場8人の中で、身長が185センチ未満は178センチの錦織だけ。大柄でパワフルな相手と対峙(たいじ)するには、ラケットの力に頼るところも大きい。使用は来季の開幕戦ブリスベン国際(12月31日開幕)からだが、それに先立ち12月7日から一般発売も行われる。

錦織は来年末で30歳。2年後には東京オリンピックもある。今年、右手首のケガから見事な復活劇を遂げた錦織が、来年は勝負をかける年になるはずだ。新兵器の名前は「ULTRA TOUR 95CV」。まさにテニス界の「ウルトラ」マンとして、世界の頂点を狙う。