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スポーツ法政コラム
スポーツ法政コラム「オレンジ特急箱根行き」

エース土井洋志

<4年間の軌跡>

 土井洋志―― 法大長距離のエースで主将と、法大に欠かせない存在の選手である。

 そこで、今回は土井の4年間を本人のコメントを交えて振り返る。

◆入学前 法大を選んだ理由

 土井は兵庫県の滝川高校で3年間陸上生活を過ごす。全国大会で優勝などの華々しい成績はなく、今では信じられないが全国レベルではそこそこの選手だった。そんな土井にも多くの大学から大学進学の誘いが舞い込んできた。土井は数多くのオファーの中からあえて強豪校ではない法大を選ぶ。

 「いろいろ勧誘があったけど、僕が入ろうとしていた頃の法政は弱かったので。高校の頃は僕は弱かったし、とりあえず箱根駅伝というものにでたかった。自分が10人の中に入りやすいのかなぁと。(箱根駅伝は)4年間の中で、1回でもでてみたかったです」。

 “箱根駅伝にでてみたい”これが土井の強豪校ではなく弱小校を選んだ理由だった。また、土井の高校時代の実力がうかがえる選択でもあった。だが、法大入学までは箱根駅伝に対する興味、憧れは特になかった。高校時代の土井にとっては、あまりにも箱根駅伝は遠い存在だったからだ。そして法大への入学が決まり、今まで無縁と思っていた箱根駅伝を初めて意識するようになる。

 「(箱根駅伝は)興味なかったです。憧れとかも別に。自分がレベル的にも箱根にでれるレベルじゃなかったし。初めてちゃんと見たのは、ここに入るって決まった高3の冬でしたね」。

 土井は箱根駅伝を大学ナンバーワンを決める大会と位置づけ、名前ではなく中身で箱根駅伝を捉えていた。

◆1年 初めての箱根駅伝

 そして法大入学。当時陸上部には坪田智夫(現・コニカ)、徳本一善(現・日清食品)といった大選手がいた。中でも土井は坪田を今でも目標の選手に挙げている。

 「目標の選手は坪田さんです。走る意識とかが全然違います」。

 そんな大選手と共に練習を重ね10人の出場枠に入り、1年で見事入学時の目標だった箱根駅伝出場を果たす。結果は9区で区間7位とまずまずなものだった。

 「(実際に箱根駅伝を走ってみて)沿道の人が多いからいつもの大会とは違うなと思う。けど、別に緊張はしない。一発かましてやろうという感じ」。

 箱根駅伝に対する意気込みは、高校時代に全国レベルで活躍できなかった悔しさを晴らそうというものが感じられる。

◆2年 急成長を遂げる

 さらに練習を積んで臨んだ箱根駅伝、前年と同じ9区を走るがそこで区間2位という快挙をやってのける。急成長の理由について土井は次のように分析する。

 「特に特別なことはしてないですね。おもいっきり努力したわけでもないし。高校の頃と変わったといえば意識。高校の頃はそこまで強くなかったというのもあるけど、練習をただこなすって感じでてきとうだった。今は自分のレベルもあがって、いろいろ考える。だされた練習のメニューに意味を考えるようになった」。

 練習に対する意識の他にも「楽しくて、自由、やりやすいです。選手のわがままがききます」。といった法政独特の環境をはじめ、コーチ陣の的確な指導などが土井の潜在能力を引き出し、急成長を遂げさせた。

◆3年 最悪の一年

 急成長を遂げた土井の3年目は、さらに飛躍する年になるはずだった。しかし…

 「2年の箱根が終わってから5月の記録会まで、ずっと不調でしたね。そんで、夏に練習のやりすぎで怪我しちゃって全日本大学駅伝に無理やり合わせたら、11月の合宿には遅れるし。去年1年間はいまいちでした」。

 長期スランプ、怪我…土井の3年目は不本意なものになってしまった。このときの怪我の時を土井は4年間で最もつらい時期に挙げている。

 「去年の怪我がいちばんつらかった。一日の中心が陸上なので、その陸上ができないと全てがうまくいってない感じがしてなげやりになった。箱根も走ったし、もういいかなと思ったりもしました。練習がある時は毎日グラウンドに行っていたけど、挨拶しただけで帰っていました。走れるようになったら、直ったけど」。

 引退も考えたという苦しい怪我の時期を乗り越えて臨んだ箱根は、3年連続の9区を任され3位相当と堂々復活を果たす。そして、箱根駅伝の打ち上げの時、土井は成田監督から主将に指名される。

 「監督からお前しかいないって言われました。僕でいいんですかって感じでした」。

◆4年 主将として、エースとして

 主将として迎えた大学最後の年、土井は主将であることを意識していない。

「主将で大事なのはチームをしっかりまとめること。僕はそんなことしてないけど。特に主将として心がけていることもないです」。

 陸上部の自由な雰囲気を壊したくないという想いがあるのだろう。その分、走りで十分に主将としての役割を果たしチームを引っ張っている。今季、日本インカレ・ハーフマラソン、箱根予選会で個人優勝、全日本大学駅伝でも区間2位と安定して好成績を収めている。この抜群の安定感がチームに安心感を与えているに違いない。

 そして、今までは徳本の存在に隠れていたが、この大活躍からマスコミに注目されてきている。

 「(注目されるのは)うれしいといえばうれしいけど。結局自分が走る中では関係ないし、意識するとだめになると思うし。注目されないほうがいいかも」。

 大学での最後の大会となる箱根駅伝。エース区間を走る土井は高校時代戦うことができなかった同世代の選手と同じ区間で勝負する。

 「高校のときは話にならないくらい強かったけど、今は同じ。不思議な感じです」。

 土井は法大は他の大学とは違うという思いを強く持っている。箱根予選会、全日本と話題になったオレンジ髪もその一環だという。はたして、箱根駅伝でもオレンジ髪を魅せてくれるのか。

 「やりたくなったら、やるかも。とにかく、他の大学とは違うという法政らしさをアピールしたいです」。

 最後に箱根の目標を語ってもらった。

 「チームはシード権確保が目標です。個人としては、区間賞とりたいです。最後だし、気楽にいきたい」。

 振り返ってみると土井の4年間は実に波乱万丈なものだった。そんな大学時代を締めくくる箱根駅伝。今までは3年連続9区の準エース区間で、活躍しても注目を浴びることはない地味な区間だった。また、先頭争いをしたことがない。いつも低い順位で、襷を渡され走ってきた。土井は箱根駅伝では裏街道をひた走ってきた。しかし、順調にいけば今回は花の2区を走ることになる。舞台は整った。自分の持ち味とする粘りの走りを最大限に発揮して、区間賞を獲って法大らしさを存分にアピールしてほしい。そして、土井洋志を全国にアピールしてほしい。

(岸 武史)

※次回は、12月4日(水)更新。「3、4年生注目選手特集(仮)」をお届けします。

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協力大学スポーツ新聞






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