黒田「壊れてもいい」志願の続投で初完封
<ドジャース3-0カブス>◇6日(日本時間7日)◇ドジャースタジアム
【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)6日(日本時間7日)=四竈衛、中島正好、佐藤直子通信員】ドジャース黒田博樹投手(33)が、メジャー初完封で今季3勝目(5敗)を挙げた。カブス戦に先発し、圧巻の112球4安打無死四死球11奪三振。4回表1死一、三塁のピンチで、福留孝介外野手(31)を遊ゴロ併殺に打ち取り、メジャー最高勝率のカブスを止めた。球速とキレを増した新スライダーがさえ渡った。無四死球での完封は日本人投手では01年の野茂英雄(レッドソックス)以来2度目の快投だった。
クライマックスへ向かう独特の緊迫感が、久しく遠ざかっていた感覚を呼び戻した。9回表。黒田がマウンドへ向かうと、地元ファンは総立ちで拍手を送った。「日本と雰囲気が違いましたが、最後まで投げ切るという、少し忘れていたものを思い出しました」。8回まで101球。黒田は、首脳陣に続投を打診されると、迷うことなく「行きます」と即答した。27個目のアウトは、自己最多となる11個目の三振。112球を投げ終えて、初めて笑った。
「技」のカギは、スライダーだった。デビュー後、試行錯誤を繰り返し、ここ数試合は広島時代の握りに戻していた。その一方で、前回登板後には、ハニーカット投手コーチから助言を受け、速い縦回転のスライダーに改良した。球速は時速140キロを超える球で、いわば「縦カッター」。捕手のアードワが「エレクトリック(電光石火)」と表現した新球が、奪三振ショーにつながった。ハニカット投手コーチは「1マイル(約1・6キロ)スピードが乗ってカッターに近くなった。速球のように見えて視界から消える」と新スライダーの威力に驚いた。
唯一のピンチだった4回表無死一、三塁。「どうしても三振を取りたかったですから」。回は浅く1点リード。本来なら同点覚悟で併殺狙いが定石のはずだが、黒田は同点にしたくはなかった。4番ラミレスをスライダーで空振り三振。さらに続く福留を遊ゴロ併殺に打ち取ると、広島時代と同じような力強いガッツポーズで気持ちを表した。
「心」のカギは、目の前の試合だけに集中する気迫だ。初めての中4日のローテーション。無意識のうちに、長い期間を見据えた投球に染まっていた。「自分の中でも戸惑いがあった。ただ、今日は野球人生が終わってもいい。壊れてもいいと思って投げました」。開幕以来、好投しながら報われない登板の連続。腐りそうになる心を、必死にふるい立たせてきた。その結果、開き直りに近い心境が、本来の大胆な投球を思い出させた。
福留の併殺は、セーフに近いものが、アウトと判定された。確かに、流れは変わり始めた。「モヤモヤしたものもあったし、やっぱり勝たないと日常生活も楽しくないですからね」。3勝目以上に、本来の黒田スタイルを取り戻したことが、最大の収穫だった。
[2008年6月8日9時12分 紙面から]
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