<ヤンキース6-2エンゼルス>◇15日(日本時間16日)◇ヤンキースタジアム
【ニューヨーク=大塚仁】エンゼルス松井秀喜外野手(35)が意地の1発を放った。ここまで2試合連続無安打だったヤンキースタジアムで、第1打席に右中間への3号ソロを放り込んだ。15打席ぶりの安打が記念すべき本塁打となり、苦しんだ末のアーチに敵地ファンもスタンディングオベーションで称賛。2打数2安打2四球と全打席で出塁し、復調の兆しも見せて愛着のある街を後にした。
懐かしい感触が手元に残っていた。2回先頭。ヒューズの91マイル(146キロ)速球をたたくと、松井の打球は鮮やかな軌道を描いて右中間のブルペンに飛び込んだ。4試合、15打席ぶりの安打は9日アスレチックス戦以来となる今季3号。ニューヨークのファンは先制点を奪われたにもかかわらず、異例のスタンディングオベーションで松井を迎えた。「ヤンキースファンにとってはうれしい出来事ではないでしょうけど、ああやって拍手してくれるのはうれしい」。7年を過ごした庭に、また忘れられない思い出が加わった。
ヤンキースタジアムでは新旧合わせて7年間でレギュラーシーズン62本、ポストシーズン5本のアーチをかけてきた。そのたびに熱狂してきたニューヨークのファンからは、7年分の感謝を込めてたたえられた。歓喜と涙がしみこんだ場所は今やホームではない。ホームの半分以下しかないビジターのクラブハウスで「ヤンキースタジアムにいる感じがしない。違う球場にいるみたい」とつぶやいた。同スタジアム68本目のアーチは、新たな歴史を刻む第1歩でもあった。
古巣相手に苦い思いを味わいながら、3連戦の最後で浮上の足がかりをつかんだ。2試合連続無安打に終わった14日の試合後には髪を切って気分転換。この日の試合前には全体練習の前に1人でケージにこもり、早出の打撃練習で突破口を探した。「打つのは負担のかかることだから」と、ひざの手術以降は打ち込みを制限していたが、もはやなりふり構ってはいられなかった。本塁打の後は2四球と左前打。前日までの2試合分を取り返すかのように4打席すべてで出塁した。
走塁にも力が入った。4回2死二塁では、ナポリの中前打で二塁から本塁へ突入。ポサダに右ひざをタッチされアウトと判定されたが、ミットの下にもぐりこむ形でスパイクが先にベースに到達していた。「普通に走ったという感じ」とさらりと振り返ったが、DHに固定され「打つだけ」だった昨年にはないプレーも随所に見えてきた。
「普通にできるような気がする」と話していた古巣との3連戦は、やはり普通とはいかなかった。来週23日からは地元での3連戦が控えているが、7月20、21日にもう1度あるニューヨーク遠征のころには、不思議な違和感もやわらいでいるに違いない。だがそれでも、ニューヨークが特別な場所であることに変わりはない。



