<巨人6-3ヤクルト>◇19日◇東京ドーム

 豪快な1発が、試合を決めた。巨人阿部慎之助捕手(35)が、18号2ランを放ち、優勝へのマジックを6に減らした。2点リードの5回無死二塁、高めのスライダーを右翼席にたたき込んだ。9月9日からの阪神、DeNA戦では2カード連続で右ふくらはぎに自打球が直撃。手負いの状況の中、チームをけん引する主将が、歓喜の瞬間をまた1歩近づけた。

 痛みが残るはずの右足で踏ん張った。土をえぐるように力強く回った一振りで、阿部が右翼席に打球を放り込んだ。2点リードの5回無死二塁。試合を決定付けたのは、人知れず、痛みと闘う主将の豪快弾だった。「久しぶりに会心の当たりだったよ」。3週間ぶりの1発は最高の感触だった。

 主将としての覚悟だった。9月9日からの阪神戦とDeNA戦で2カード連続で右ふくらはぎに自打球が直撃。14日DeNA戦は欠場したが、15日広島戦から先発した。広島への移動前、スーツのズボンをたくって「ぞうさんみたいでしょ」と笑った。患部は青く腫れ上がっていたが「残りも少ないですから。頑張りますよ」と決意を込めた。

 9連戦を終え東京ドームに戻ったこの日、早出特打を行った。ロングティーに加えフリー打撃も実施。若手に交じってバットを振った。例年、夏場から10グラムほど軽くさせたバットを使用するが、気分転換も兼ね、今年はカラーもチェンジ。新たな相棒で約3カ月ぶりの3打点を稼いだ。原監督は「本人の中でもがいて、結果が出た」とたたえた。

 エースの好投も陰から支えた。9月6日のヤクルト戦の試合前、前夜に6回途中4失点で8敗目を喫した内海に声を掛けた。「グラブを持ってこい」。神宮クラブハウスの駐車場内で約20分間、キャッチボールを行った。「投げる時、手首が寝てないか?

 手首を立てて、強いボールを投げるように意識しろ」。高級車が取り囲む、異様な空気の中、ミット音を響かせた。

 阿部

 引っかける失投は、ボールが強いからリスクが少ない。でも、シュート回転のボールは危ないんです。映像を見てて、ちょっと思ったから。

 12日のDeNA戦、一塁からもり立て、内海も完封勝利で応えた。「僕にとっての宝物。だから、大切に胸にしまってるんです」(内海)。エースと主将-。苦境に立った時、助け合える関係が、強さの象徴だった。優勝マジックは6に減った。「1ケタになったからといって、気を抜かずに、その先を見てしっかりやる」。頼りになる主将の顔は、試合後も引き締まったままだった。【久保賢吾】

 ▼阿部が8月29日DeNA戦以来の18号。石川からは通算10本目となり、阿部が10本以上打った投手は三浦(DeNA)11本、館山(ヤクルト)10本に次いで3人目だ。8月29日DeNA戦も内海が勝利投手。7月まで内海が登板した試合で本塁打を1本も打てなかった阿部だが、8月以降は8月2日10号、同15日12号、同22日14号、同29日17号、9月19日18号と、9本のうち5本が内海登板。8月以降は内海が投げた試合でよく1発が出る。