<西武6-3ソフトバンク>◇19日◇西武ドーム

 小さくても関係ないんです!

 西武森友哉捕手(19)がソフトバンク中田から5号3ランを右翼席にぶち込んだ。4回無死一、三塁。内角に沈む変化球を、体を回転させながら捉えた。プロデビューから29試合で5本塁打と驚異的なペースでアーチを量産している。公称では身長170センチだが、実際は168センチともうわさされる小兵から飛び出す本塁打。「小さな巨人」の打撃に迫った。

 小さな森が、でっかいアーチを描いた。内角に食い込みながら沈むスライダーは見逃せばボール気味。バットに当ててもファウルが妥当な1球だった。「押し込むというよりは体の回転で打った感じです」と振り返るように、体の軸をスムーズに回転させながらバットに乗せた。

 身長170センチはチームの支配下登録選手で一番小さい。球界屈指のホームラン打者で175センチの中村は「でかい方がいいですよ。野球選手っぽいし」と言うが、森はハンディを感じさせない。5号3ランを生んだ「体の回転」は小兵ならではのアドバンテージを生かしたものだった。身長に比例して短い足だからこそ回転速度が増し、操作性が高い短い腕で白球を巧みに捉えた。

 技術面だけではない。小柄な体格が反骨心を生み、活躍を支えている。米メジャーリーグの現役選手で最も小柄(165センチ)なアストロズのアルテューベの言葉が象徴的だ。ア・リーグのリードオフマンは「背が小さいからといって、自分の可能性に自分で限界を設けるようなことはしない」とし、森についての質問には「野球が大好きな気持ちと、一生懸命に戦う姿勢を忘れなければ、背の低さなんて補うことはできる」と断言した。

 当然、森も同調した。「ハートです。強い気持ちを持つこと。小さいということをネガティブに思ったことは今までに1度もない」と言い切った。この日は中村、メヒアの主砲2人を本塁に迎え入れる1発。「三振だけは絶対にしたくなかった。少々のボール球でも振っていこうと思っていた」という闘争心こそがパワーの源だった。

 もはや見た目におけるサイズは関係ない。森の躍動が、己の存在価値を大きくしている。【為田聡史】

 ▼西武森が今季5本目の本塁打。高卒新人のシーズン5本塁打以上は93年松井(巨人)以来で、2リーグ制後13人目。パでは86年清原(西武)以来になる。森は通算49打数で5本を打ち、何打数に1本打つかの本塁打率(打数÷本塁打)は9・8打数。単純に比較できないが、1年目の清原(13・0打数)や松井(16・7打数)のペースを上回っている。