<楽天1-0日本ハム>◇19日◇コボスタ宮城

 ふと、ぼやいた。終盤8回に決勝点を奪われ、我慢比べでの惜敗。日本ハム栗山英樹監督(53)は、小声でうめいた。「こういう試合を取れたら、大きいんだけれど」。復調気配のルイス・メンドーサ投手(30)が快投した。13三振を喫しながらも下位打線から6、8回の2度、得点圏のチャンスをつくったが今季8度目の0封負け。「我々(首脳陣)も悪いし、選手も考えないといけない」と自戒する展開、内容だった。

 デモンストレーションだった。進出濃厚なクライマックスシリーズ(CS)。エース級が登板し、競り合い、投手戦のケースが頻発する短期決戦。楽天先発の則本は、格好の試験台だった。均衡が破れずにいた6回1死三塁。大野奨太捕手(27)に敢行させたスクイズがファウルとなり、1点を逸した。8回1死一塁からは手堅く犠打、死球もあり、なお2死一、二塁へと広がる。西川が見逃し三振で万事休した。

 尊敬する名将への思いも胸に秘めた、特別な一戦だった。試合前、楽天の練習中。栗山監督は打撃ケージの後ろに見えた大きな背中へ、小走りで向かった。日本ハムの誰よりも先に、一番乗りで星野監督に惜別のメッセージを伝えた。今季限りでの別れを惜しんだ。「監督とは…と一番、話をしてもらった。『このヤロー』と思われる試合をしないと」と、恩返しを期して臨んでいた。

 楽天は指揮官が育てた則本、トレードで獲得して見いだした藤田が決勝打と兵が躍った。対照的に日本ハムは、栗山監督が野手成長株の筆頭に据えた西川が3三振とブレーキ。大胆に打った策は結果的に、裏目に出た。「先を見たら、怖くてしょうがない。すべてのシーンで精いっぱいやる」。今日の勝敗、ソフトバンクの結果次第でリーグ制覇の夢は完全についえる。現実的な目標のCSへの教訓と、強く胸に刻む1敗。去りゆく闘将から、プレゼントされた。【高山通史】