<阪神9-3中日>◇19日◇甲子園

 阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が1年間、活躍できた理由が、わずか2球に凝縮されていた。同点の2回2死一、二塁。山井の初球、浮いたスライダーを強振すると完璧な大飛球が左翼ポール際へ。助っ人もアーチを確信して歩き出す。だが、無情にも、わずかに外れてファウル…。思わず舌打ちした。「ツイてねえな!」。だが、心が乱れたのは一瞬だけだ。すぐに冷静さを取り戻した。

 妙な色気はまるでない。力みは消え、再び山井に対する。「すぐ切り替えて打てる球を打とうと思った」。2球目は外角低めスライダー。難しい球を強振し、ライナーで左前に運んだ。勝ち越し適時打で、今季99打点目。アンラッキーな結果を引きずらない心の強さが光った。気持ちを切り替えられるタフネスさが今季、大きなスランプに陥っていない要因だろう。

 それだけではない。相手バッテリーの意図を読み切っていた。1回1死一、二塁。山井-谷繁のバッテリーは外角一辺倒の配球だった。アウトローへのスライダーが2球、フォークが1球。「外角低め」ゾーンへの目付けはできていた。

 「投手が外角のスライダーや真っすぐとか、外寄りの球が多かった。外に来るなという意識はあったよ。ファウルはスライダーだった。もう1球くらい、続けてくるかなと思った。簡単な球じゃなかったけどね」

 シーズン序盤、外角低めスライダーに簡単に空振りしていた姿は消えた。日本の野球にも、すっかり慣れた。「残り10試合、リラックスして、自分の打てる球を打とうという気持ちだよ」。肩の力が抜けているから長丁場も耐えられる。9月上旬の名古屋遠征では、エルナンデスら故郷ドミニカ共和国の仲間と焼き肉店に出かけて談笑したという。日々、泰然自若な4番が100打点に王手をかけた。【酒井俊作】

 ▼ゴメスが山井から2安打1打点。通算16打数9安打、打率5割6分3厘と圧倒。対戦した6試合全てで安打を放ち、6月28日(甲子園)、9月6日(ナゴヤドーム)に続き3試合連続2安打。山井は今季チームにとって、5試合対戦し、1度も黒星をつけられずに3勝を許す難敵。虎キラーのキラーが本領発揮した。