阪神の沖縄・宜野座キャンプに今季初めて米大リーグのスカウトが訪れた。レンジャーズのジョー古河環太平洋地域コーディネーターが視察。今季、2年契約の最終年を迎える呉昇桓投手(32)のトレーニングに熱視線を送った。150キロ超を誇り、昨季39セーブを挙げてセーブ王に輝いた。レ軍は、阪神の元守護神藤川を獲得。今度は韓国生まれの剛腕に関心を示しているとみられる。

 米球界のスカウトが阪神のキャンプを視察したのは今季初めてだった。もっとも注目度が高いのは、昨季39セーブを挙げてセーブ王に輝いた呉昇桓だろう。この日の午前中、古河氏はサブグラウンドへ。視線の先に剛腕がいた。キャッチボールを行う投手陣から離れて、ただ1人、ノックでゴロ捕球を繰り返した。下半身強化に明け暮れ、ノースロー。古河氏は視察した意図を明かさなかったが、呉昇桓は調査対象の1人だ。

 置かれた立場が米球界の注目を集める。韓国球界最多277セーブの実績そのままに、14年も獅子奮迅の働きを見せた。今季は阪神と2年契約の最終年。十分に結果を示しており、動向が注目されるのも自然な流れだろう。昨年11月には母国韓国メディアに「多くの韓国人選手がメジャーリーグに挑戦している。来年まで阪神と契約がある状態だが阪神が挑戦の終わりではないと言ってきた」の発言が報じられた。

 だが、呉昇桓自身は雑音を封じ、阪神でのプレーに全力を尽くす構えだ。今年1月には「韓国のマスコミが取り間違えただけ。今年は阪神のユニホームを着て一生懸命全力を尽くすだけです。その先のことは考えていない」と言い切った。練習に妥協は一切ない。筋力トレーニングを重視し、さらなるスピードアップを目指す。阪神にとっては欠かせない守護神なのだ。

 レンジャーズでは、ダルビッシュが先発で活躍。オフに救援陣の補強として、12年まで阪神のクローザーを務めた藤川も獲得した。リリーフには、昨年13セーブを挙げたフェリスが最有力だが、26歳と若く選手層は手薄。今季も阪神の抑えとして呉昇桓が活躍すれば、補強対象として白羽の矢を立てる可能性は十分にある。

 今後も調査を続ければ、それは熱意の表れだろう。虎は呉昇桓が活躍すればするほど、米国から熱視線を浴びるジレンマを抱える。