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紙面企画

事件記者清水優 ブラジル体当たり

事件記者清水優 ブラジル体当たり

◆清水優(しみず・ゆたか)1975年(昭50)生まれ。38歳。東京外大ポルトガル語学科卒。98年入社。静岡支局、文化社会部、朝日新 聞社会部警視庁担当を経て、文化社会部に帰任。事件、事故など中心に行き当たりばったりながら体当たりで取材。体重95キロ。

リオ最大の貧民街ホシーニャに決死の潜入/上


 【リオデジャネイロ15日(日本時間16日)】リオデジャネイロのリゾートビーチを見下ろす岩山にへばりつくように広がる貧民街ファベーラ。ブラジルの格差の象徴として近年、観光ツアーも盛んになっているが、町の奥まで入れば、今も麻薬組織と警察の銃撃戦が日常茶飯事の危険地帯だ。地元の顔役にガイドを頼み、リオ最大のファベーラ「ホシーニャ」地区に潜入。2回にわたってルポする。

 ドブのような悪臭を放つフタのない水路にはペットボトルや空き缶、ポテトチップの袋などのゴミが散乱し、その上を薄汚れたニワトリが歩く。幅1メートルそこそこのコンクリートの道は割れ、水がたまっている。道の両側には家や店の外壁が迫り、迷路のように入り組む。さっきの角までは、ツアーの客がカフェでランチを食べていたが、曲がり角を曲がると、雰囲気が一変した。

ビニスさんがOKを取ったところでは撮影できる。子どもたちが壁を黄色く塗っていた

 道が狭くなるにつれ、案内を頼んだ女性の顔が引きつっていく。ホシーニャの住民でライブイベントなどを手がけるメリーニャさん(42)は「ここから先は麻薬組織のエリアで私の顔も利かない。案内はここまでが限界」と言って足を止めた。この先で発砲事件があったばかりで、危険だという。

危険エリアの案内をしてくれたビニスさん。パイプは各家庭の水道管。コードは電線

 もっと奥を見たいと頼むと、危険エリア内のバーにバンドの一員として出入りしている男性ビニスさんを呼んでくれた。角ごとに止まり、ビニスさんが角の先の住人に「外の人間」を入れていいか、確認しながら進む。

ファベーラの中の急な坂。まだ治安のいいエリア内で、この近くにはホテルもある

 奥へ行くに従い、傾斜が急になり、らせん階段のような坂を上るよう強いられる。巨大な岩の下に建つ家の前で一息ついていると、ビニスさんが戻ってきた。「この先の路地は今日、外の人間を歓迎しない。ここまでだ」。

ホシーニャの外縁部、岩山の中腹からの眺め(撮影・清水優)

 リオデジャネイロ市役所のホシーニャ支所によると、海抜300メートルの岩山の麓から中腹までの87万平方メートルに15万人の人たちが暮らす。市街地で仕事をしたり、ファベーラで店を出したり。所得は最低賃金(月収約700レアル=約3万3600円)以下で多くの住民は住民税も払えない。警察の目が届かない迷路のような町に麻薬組織が入り込んだのは80年代ごろからだという。

 W杯や五輪に向けた治安対策で、武装警察官が巡回を始め、中央部は観光も可能になった。しかし、外縁部の路地の奥は今も麻薬組織が支配。日常的に警察と組織の銃撃戦があるという。

ファベーラの歴史を調べているフィルミーノさん(撮影・清水優)

 ホシーニャの住民でファベーラの歴史を調べているアントニオ・カルロス・フィルミーノさん(47)は「ここの住民はかつて、大農場主、次に軍政府、そして組織に支配されてきた」と指摘。「町を変えるには教育で住民自身が自立した市民になるしかないのに、今は警察と組織の暴力に支配されている」と話した。(続く)

















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