<浪速商事グループ代表取締役会長 山田直稔(88)>

 「さすが日本 ! 」っちゅうことをやらないと、いけん。名古屋、大阪にあって東京にないもの。天守閣を建てろってこっちゃ。今、東京の街にムードがない。天守閣ができれば日本の五輪らしさがグンと出る。

 皇居内に江戸城の天守閣跡がある。基礎はできている。その上に木造で建てれば150億円ぐらいでできるはず。宮内庁は簡単にうなずけないだろうけど、都民1300万人が1000円ちょっとずつ出せば、宮内庁も嫌とは言えない。五輪組織委員長の森(喜朗)さんも、それぐらい打ち出せたら、たいしたもんだ。

 前回の東京五輪は38歳だった。あの時の東京のムードは今と全然違った。日本中のあらゆるものが五輪で盛り上がっていた。赤坂に1000人入るキャバレーがあってね、錦糸町にもあった。とにかく勢いがすごかった。

 東京で五輪を初めて見て、68年のメキシコで五輪にはまった。ひょんなことからグラウンドに降りちゃって、ソンブレロ(メキシコの帽子)をかぶって日の丸を振っていたら13万人の大観衆が総立ちで注目してくれた。競技が終わって会場から出ようとすると写真、取材攻勢にあい、100メートル進むのに1時間ぐらいかかったよ。五輪は世界中の人がひとつになれる。それがはまった理由だよ。

 12年ロンドン五輪まで夏季五輪は全部行った。1大会行くと全部で1000万円ぐらいかかっちゃうんだ。でも行きたい。

 2020年は94歳。食べ物には気をつけてるよ。年1回、2CC10万円の栄養剤も打ってる。84年ロス五輪で長嶋茂雄さんに「インターナショナルチアリーダー」と言われた私が東京五輪にいなきゃ、世界中の人が「あのオヤジどうした?」って心配しちゃうでしょ。(取材・構成=三須一紀)(2014年9月17日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。