<松山英樹専属キャディー・進藤大典>


 先週のアクセンチュア・マッチプレー選手権は2回戦敗退でしたが、英樹は1回戦でカイマー、2回戦でマクダウエルと海外メジャー覇者と戦い、引けをとらないプレーをしました。ただ日本にはマッチプレー戦がないので、経験値が足りない。それが最後に勝負を分けたように感じました。

 僕も勉強をしました。マッチプレーは毎試合、最終日最終組を2人で回るようなもの。選手は気合が入るのですが、特に英樹はアドレナリンの出方がすごい。だから土壇場でも気後れせずに力を発揮できるのですが、今回は、ここ一番で出るアドレナリンに注意する必要を感じました。

 マクダウエル戦の17番パー4は、フェアウエーからの第2打がグリーンをオーバーし、ボギーをたたいて追いつかれた。あの場面、風はほぼ真右から。でも飛びすぎを抑えるために、僕があえて「右寄りからの追い風」と伝えても良かったかもしれません。

 目に見えないアドレナリンを計算に入れるのは難しいのですが、伝える情報を絞るというやり方もあります。普段僕たちは選手に「グリーン手前まで」「ピンまで」「グリーン奥まで」と距離を伝えます。そこをあえて手前は省き、奥までの距離だけを強調すれば「奥に外したくない」と、飛びすぎを警戒させることができます。

 08年全米オープンの最終日最終ホールでは、タイガー(ウッズ)にキャディーのスティーブが「ピンまで100㍎以上あるけど、今の君はアドレナリンが出てるからサンドウエッジで届く」と言い、バーディーを取らせたという逸話もあります。これはスティーブが経験豊富で、しかもタイガーのすべてを理解していたからこその助言です。

 僕ももっと経験を重ねて、いつかはスティーブのような助言ができるようになりたいと思っています。(2014年2月26日付紙面掲載)