私の経験則からだが「スポーツに秀でた人は、歌もうまい」と思っている。

 それを、証明してくれたのが、4日、水曜日の日本プロゴルフ選手権日清カップ(兵庫・ゴールデンバレーGC)のプロアマ大会が行われた日の夕方だった。我々、報道陣に「明日からよろしく」ということで懇親会が開かれた時である。シニアプロたちが、結成した“おやじバンド”が、我々の翌日から4日間の“ペンの戦い”を前に、癒やしのひとときをくれた。

 ザ・ワイルドワンズの「思い出の渚」、チューリップの「サボテンの花」、最後は吉田拓郎の「落陽」で締めてくれた。そのメンバーを紹介しよう。1959年(昭34)と1960年(昭35)生まれのシニアゴルファーで結成された「ゴクローサンズ」。プロゴルファーであり、プロドラマーでもある高松厚が率いている。ギターが中西信正、ツアー6勝の奥田靖己もギターを抱えるが、バンド初心者。この2カ月でグングン上達して、私の耳に心地よいサウンドを聞かせてくれていた。「生まれて初めてゴルフ以外の趣味を持った」という奥田。そのギターを抱える姿が、フワッーと力を抜いて構えるアドレスに似ているな、思ったのだが、そのうまさには驚くばかりだった。タンバリンをたたくのが、崎山武志。高見和宏が、軽妙なMCで盛り上げてくれた。

 そして、メーンボーカルが1990年の日本プロの覇者、54歳の加瀬秀樹。シニアツアーも頑張り、この大会にも出場して、わずか1打足らずに決勝進出を逃したが、ツアー4勝であの飛ばし屋ぶりは健在だった。マスターズなどのテレビ解説をみなさんも聞いたことがあると思うが、低くて渋い、いい声をしている。そんな加瀬が、今大会でキャディーを務めた長男・哲弘さん(19)とともに、すばらしいハーモニーを聞かせてくれた。

 「君と見つめたあ~の渚…」-。思わず聞きほれた。「ゴルフうまい人は、歌もうまいな」。終わってから加瀬に言うと、「ヘヘへ」と笑って照れた。

 野球界でもそうだ。05年、セ・リーグを制した阪神岡田監督の美空ひばりの「川の流れのように」や「乱れ髪」などは絶品だ。亡くなった稲尾さんの歌も玄人はだし。小倉で聞いた「無法松の一生(度胸千両入り)」は今でも耳に残っている。野球でもゴルフでも、そう言えばサッカーのカズもメチャメチャうまいのは、あらゆるスポーツに必要なリズム感が一流選手には備わっているからだろう。

 自分も歌うのは好きだが決してうまくはない。野球もゴルフをしてきたが、大したことがないのは、リンクしているということだろう。みなさんの周りにも歌のうまい人はいるでしょう。その人、たぶんゴルフもうまいのではないでしょうか。【町野直人】