<男子ゴルフ:つるやオープン>◇最終日◇27日◇兵庫・山の原GC山の原C(6770ヤード、パー71)◇賞金総額1億2000万円(優勝2400万円)(前文は該当部分のみ使用)

 プロ5年目の岩田寛(27=フリー)が自滅して初Vを逃した。単独首位でスタートした岩田は、16番まで5バーディー、1ボギーと好調をキープ。残り2ホールで2位に2打差をつけながら、まさかの連続ダブルボギーで3位に終わった。

 岩田が天国から地獄へ落ちた。ホールアウト後、ギャラリーに頭を下げても、ホにねぎらわれても、帽子はとれなかった。「今は何も考えられないです…」。うつろな表情の両目は涙で光っていた。師匠の江連忠に肩を抱えられ、足早にロッカーへ消えた。

 ホに2打差をつけて迎えた17番。残り226ヤード、5Wで2オンを狙ったが、ボールはグリーン奥の林へ飛び込んだ。ピン近くに落ちた第3打は、下りのラインに乗って無情にも池へ…。「冷静じゃなかったかもしれない」と悪夢を引きずり、18番ティーショットは右のがけ下へ打ち込んだ。

 16番までの4日間70ホールは、国内トップの「武器」でスコアを伸ばした。初シードだった昨季、平均パット数1・7527でいきなり男子プロ1位を獲得。師匠でシニアプロの父光男さん(63)が「14歳でゴルフを始めたころ、パッティング勝負が私と五分五分で驚いた」と振り返る才能だ。今大会も「グリーンが難しい」と嘆く選手が多い中、安定したパットでV争いに絡んできた。

 06年秋、光男さんの教え子で東北福祉大の先輩になる星野英正(30)の誘いで、江連の門をたたいた。実力派プロに囲まれた環境と、江連が「マジメでストイック」と感心する姿勢で力をつけた。故郷・仙台を離れて神戸で成長する息子に「体つきやゴルフへの言動が全然、変わった」と光男さん。2人の師匠のもとで、頭角を現してきた。

 初Vへの重圧に負けたが「自信にはなった」と岩田。仙台で吉報を待った光男さんも「岩田寛の名前は覚えていただいたでしょう。次こそ、ですね」と健闘をねぎらった。「遼フィーバー」に沸いた今大会で、実力で魅せた「イケメンプレーヤー」。悔し涙が歓喜の涙に変わるまで、遠くないはずだ。【近間康隆】