<男子ゴルフ:カシオワールドオープン>◇2日目◇25日◇高知・Kochi黒潮CC(7280ヤード、パー72)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 ツアー10勝を誇る田中秀道(40=信和ゴルフ・ゴールデンバレーGC)が7バーディー、1ボギーの66を出し、通算4アンダー140の5位に浮上した。07年米ツアーから復帰後はケガに苦しみ、今季の獲得賞金も約64万円。この日も腰、ひざの痛みに耐えながら、ベストスコアをマークした。01年ミズノオープン以来、約10年ぶりの優勝か、2位以内で、来季の賞金シード権獲得は確実になる。高山忠洋(33)が通算9アンダーで単独首位に立った。

 気力だけだった。古傷の腰、背中、ひざの痛みは消えていない。満身創痍(そうい)の状況の中で、田中は1番でバーディースタートを切ると7番からは4連続バーディーを奪取。終わってみれば、首位と5打差の5位に浮上した。「調子は超最悪から最悪になった程度。気持ちだけで戦った」と厳しい表情を崩さなかった。

 90年代後半からツアーの第一線で活躍し、02年から米ツアーに挑戦。だが、166センチの小柄な体を酷使したせいで、07年度に米ツアーから復帰後はケガに苦しんだ。一時は真っすぐ歩けず、コップもつかめないこともあった。今季のシード権はなく、今大会は推薦出場。前週は来季シード権のかかる3次予選会を2打差で落ちていた。

 どん底で迎えた今大会だったが「推薦をいただいたし、優勝を目指すとの思いで(高知に)入った」。愛弟子の存在を励みにする。広島・瀬戸内高の1年後輩の河井博大(40)が5月の日本プロ選手権でツアー初優勝を飾った。一時は引退を考えた苦労人を支え続けてきただけに「自分がやめないように励まして、今度は逆になった。自分もやめないように頑張りたい」と師匠の意地を口にした。

 今季の獲得賞金は64万8485円の178位。来季のシード権獲得の71位以内に入るためには、賞金2000万円の2位以内に入らなければならない。「もう失うものはない。やれるだけやって、優勝を目指したい」。苦労を物語るように、しわの数が少し増えた秀道の表情に、強い覚悟が見えた。【田口潤】

 ◆田中秀道(たなか・ひでみち)

 1971年(昭46)3月29日、広島県生まれ。広島・瀬戸内高卒。91年プロテスト合格。95年フィリップモリスでツアー初優勝。02年から米ツアー参戦。ツアー通算10勝。166センチ、62キロ

 ◆賞金シード

 規定出場試合不足の64位フェルナンデスカスタノ(スペイン)を除く、賞金ランク上位70人に来季の優先出場権が与えられる。そのため、今大会終了後の同71位までに入る必要があり、獲得賞金のめどは約1500万円。シード落ちした選手は、来月1日から6日間の最終予選会(三重)で来季の出場順位を争う。もっとも、田中は前週の3次予選会を通過できなかったため、この大会に懸けるしかない。