<男子ゴルフ:つるやオープン>◇最終日◇28日◇兵庫・山の原GC山の原C(6793ヤード、パー71)◇賞金総額1億2000万円(優勝2400万円)

 パワーだけでもない。スイングの美しさだけでもない。転向2戦目でプロ初優勝を成し遂げた怪物ルーキー松山英樹(21=東北福祉大)の強さの秘密は「優勝」から逆算した実戦的なスタイルにある。小学1年で青木功と出会ってから、常に大会を想定し、勝利を奪うためにテクニックを磨いてきた。

 15番パー5。2オン狙いに失敗し、グリーン手前のバンカーに打ち込んだ松山だが、第3打をピン横約1メートルにつけてバーディーを挙げた。ここから怒とうの4連続バーディーで、見事な逆転勝利を果たした。

 昨年の賞金王、藤田寛之は言う。「飛距離も魅力だけど、松山君はグリーンに近づくにつれ、ゴルフがうまくなる」。ショットの好不調の波が激しくとも、常に優勝を目指して戦えるのは、ショートゲームのうまさがあってこそだ。

 運命的な出会いがあった。小学1年生の時だ。球拾いをする代わりに練習をさせてもらっていた愛媛・奥道後GCに、青木功がクラブ調整ラウンドに現れた。松山が盗み見していると「隠れてないでこっちにこい」と近くでプレーを見せてくれた。目に焼き付けた多彩な技をマネすることが、アプローチ技術を高めるきっかけになった。

 ショットも実戦的な練習で磨かれる。短い番手から順番に打つのが、普通のスタイル。「いいスイングをつくることで、いい結果は出る」という信条の石川遼などは、スイングづくりのために1つの番手を打ち込むことも多い。だが松山はドライバーからショートアイアン、そこから再びドライバーなどと、長さの違うクラブを交互に打つ。

 「グリーン周りに行って、短いクラブで小さな動きをした後、ドライバーのスイングがおかしくなる」と、実戦での失敗を踏まえた練習。常に試合を想定して球を打つのが、松山の流儀だ。

 どんな球が打ちたいのか、と松山に聞いたことがある。「説明しづらい。試合をしていると『勝つためには、こういう場面でこういう球が打ちたい』とかが出てくる。その球を打つために、練習するんです」。欲しいのは、結果につながる球。松山の意識は常に「勝利」に直結している。【塩畑大輔】<松山英樹(まつやま・ひでき)アラカルト>

 ◆生まれ&サイズ

 1992年(平4)2月25日、愛媛・松山市。181センチ、75キロ。家族は両親と姉、妹。

 ◆4歳でゴルフ

 日本アマ出場経験がある父幹男さんの教えで4歳からクラブを握る。他のスポーツは「息抜きで卓球」。ボウリングの平均スコア150~160。250近いスコアを出したこともあり「パットのいいイメージが出るんです」。

 ◆ジュニアで頭角

 高知・明徳義塾高で08年四国ジュニアに優勝。09年日本ジュニア優勝。

 ◆ゴルフの祭典

 東北福祉大1年時の10年アジアアマで優勝し、翌11年マスターズに出場。日本人最年少の19歳1カ月で決勝ラウンドに進み、27位で日本人初のローアマ獲得。12年マスターズに2年連続で出場し54位。

 ◆アマでツアーV

 11年三井住友VISA太平洋で同年マスターズ王者シュワーツェルや谷口徹、同学年の石川遼らプロを抑え初優勝。

 ◆プロ転向

 4月2日にプロ宣言、所属先は東北福祉大。現在も生活拠点は仙台市内の大学寮。プロデビュー戦の東建ホームメイト・カップは10位だった。