<男子ゴルフ:フジサンケイクラシック>◇最終日◇7日◇山梨・富士桜CC(7437ヤード、パー71)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 岩田寛(33=フリー)が、6バーディー、1ボギーの66で回り、通算10アンダーで、プロ転向11年目にしてツアー初優勝を飾った。6年前の今大会でプレーオフで敗れたリベンジを、18番の劇的バーディーで果たした。

 岩田がプロ11年の集大成の一撃を見せた。通算9アンダーで迎えた最終18番パー4の第2打だ。同じ9アンダーにはI・H・ホとB・ジョーンズが並んでいた。「ここでバーディーを取ればいける」。岩田は集中した。これこそが今年、取り組んできたテーマだ。

 ピンまで190ヤードを7番アイアン。こん身のセカンドはピン右1・5メートルにつけた。一瞬、6年前の悲劇が頭をよぎる。08年フジサンケイ・クラシック。最終18番、入れれば初優勝が決まる約1メートルのバーディーパットを外し、プレーオフで敗れた。「あの時はラインで迷った。今日は真っすぐ打った」。手がスムーズに動いた。最終組のホがバーディーを奪えず、初優勝が決まった。

 東北福祉大の同級生の宮里優や師匠のように慕う谷口らが、祝福のシャワーを浴びせてくれた。谷口が目を真っ赤にしているのに、岩田は泣かなかった。「今日は(優勝を)取りにいって取れたから」。

 宮城県仙台市出身。シャイで無口な33歳だ。優勝インタビューでは東日本大震災の被災者の人たちに「少しは勇気を与えられたでしょうか」。昨年までイライラで自滅した男が、この日のゴルフのようにゆっくり落ち着いて自分の思いを話した。【町野直人】

 ◆岩田寛(いわた・ひろし)1981年(昭56)1月31日、宮城県仙台市生まれ。ゴルフは14歳から始め東北福祉大ゴルフ部出身。04年にプロ転向。06年から昨年まで8年連続シードは保っているが、過去2位(3回)が最高だった。177センチ、74キロ。