阪神の相手はどちらになるのか。虎党も注目したであろう巨人とDeNAの初戦は好ゲームとなった。巨人井上温大、DeNA東克樹とそれぞれの相手に対し、好相性の左腕がいずれも好投。四死球のない接戦は巨人のクローザー、マルティネスが度会隆輝に1発を浴び、DeNAが王手をかける結果となった。

これで思い出したのは今月1日、甲子園で行われた阪神と巨人の激闘である。1-2と1点を追う阪神が土壇場9回裏にマルティネスから1点を奪い、同点に。試合はそのまま延長12回ドローに終わった。勝てなかったけれど上位にいる阪神にとっては勝ちに等しい試合だったと思う。

そして、そこでキラリと光ったのが中野拓夢だった。9回裏、1死走者なしの場面で打席に入るとマルティネスから右翼線二塁打をマーク。これで球場の様子が一気に変わった。どこか諦めムードも漂っていたが「いけるで」という感じに変化。そして大山悠輔の適時打で追いついたのだ。

独断と偏見で言わせてもらえば優勝をグッと近づけたのはこのゲームではないか、と思っている。その意味でカウント2-2からの6球目、スライダーを打った中野の二塁打は実に貴重だ。それについて中野と少し話をする機会があった。彼が振り返ったのはこういうことだ。

中野 あれは本当に反応で打ちました。(カウント1-2からの4球目)高めの真っすぐをファウルできたんです。あれで『当たるってことは打てるぞ』と思って。変化球も頭に入れながら待ちましたけれど。ああいう当たりもあまり記憶がありませんね。

ファウルを打つことで打席の中で自信を持ち、それが結果につながったと教えてくれた。好投手相手にこそ、ファウルで粘る重要さを教えてくれる話である。

そして、この中野。意外というと叱られるかもしれないが誇れる数字がある。甲子園での「打率2割9分9厘」だ。これは規定打席に達している選手の中では森下翔太、佐藤輝明、そして大山のクリーンアップを抑え、球団トップなのだ。

相手がどちらになるにしろファイナルが甲子園で行われることは決まっている。その本拠地で高打率なのが中野だ。もちろん打つだけでなく2番打者として難しい仕事もあり、コンディションの問題もあるようだが彼がCS突破に欠かせない存在なのは間違いない。(敬称略)

阪神中野拓夢(2026年10月撮影)
阪神中野拓夢(2026年10月撮影)