龍谷大平安(京都)のエース左腕、野沢秀伍(3年)が胃腸炎で腹を下しながら、延長11回完封勝利をやってのけた。津田学園(三重)の注目右腕、前佑囲斗(3年)との我慢比べに勝ち、京都勢の甲子園春夏通算200勝を達成。5年ぶりの春制覇へ、エースが最大の試練? 乗り越えた。

   ◇   ◇   ◇

野沢は相手打線より手ごわい? 敵と闘っていた。2日前に胃腸炎にかかり、腹を下していた。気弱そうな顔から「じじい」と名付けた原田監督も「球速が出ない。心配していた」とハラハラ。左腕も「下痢のせいか、力が入らなかった。途中で出てしまうんじゃないかと…」と苦笑いだ。

投手にとって、下半身の踏ん張りが利かないのは致命的。だが「『下半身』を使って低めに低めにと気をつけた」と根性を出した。最速の138キロには全く届かない平均130キロほどの直球を四隅に集め、宝刀チェンジアップで仕留めた。力で押せない分、制球に細心の注意を払えた。ペースを乱さず、9回から最後の3イニングは全て3者凡退と加速した。11回の攻撃で決勝点が入ると、垂れた眉をもっと下げて喜んだ。

昨秋は同じ左腕の豊田祐輔(3年)に背番号1を譲り、登板回数は2人で分け合った。数々の左腕エースを擁して全国上位に導いてきた原田監督からは「平安のユニホームが似合わない」と言われたこともある。冬場に自分を追い込む材料はいくらでもあった。

京都勢の甲子園通算200勝目を刻むベストピッチ。試合後、指揮官は「(腹が)緩くなってちょうどよかったかな。そんな投球ができるんだなって。成長ですね」と喜んだ。腹痛の発症以来、薬で懸命に整腸し、監督に成長を認めさせた。

「(緊張で)チビっていた選手もいたと思ったけど、しっかり守ってくれた。エース対決で負けられない、と思っていました」。少しもチビらず投げ抜いた132球だった。【柏原誠】