#TSUTSUGOチャレンジ-。レイズ筒香嘉智外野手(28)の打撃論に迫る。コロナ禍で日本同様に大リーグも開幕が延期。当初の予定では3月26日(日本時間27日)に本拠地・トロピカーナフィールドでの開幕パイレーツ戦から、メジャー1年目のシーズンをスタートしているはずだった。一時帰国中の筒香の実体験から野球大国アメリカの“ベースボール”を分析しながら、日本の“野球”との差を探っていく。キャンプ、オープン戦、日常の中に差を埋めるヒントが点在。打撃論を軸に、日米の「比較論」を短期連載する。

   ◇   ◇   ◇

2月18日(日本時間19日)、米フロリダ州ポートシャーロット。温暖なキャンプ地に緊張感が走る。注目のメジャーキャンプ初球は…空振りだった。首脳陣、チームメート、ファン、メディアの視線が筒香1点に集まった。

この1球から多くの学びを得た。

「距離が近くて、日本よりも球が速く感じる。正面からのティー打撃を上から投げているような感じでした。いきなり空振りで恥ずかしかったし、どうしようかと思った。ただ、試合での間合いを考えると『これだな』と。日本の打撃練習の距離だと、練習と試合の間合いがかけ離れている。オフシーズンでフォームをつくっていくためには、すごくいいとは思う」

フリー打撃では、日本はマウンドから約3メートル前方、メジャーは約5メートル前方から投げるのが普通。だがレ軍の場合は、約9メートル前方、マウンド-本塁間の18・44メートルの約半分と極めて近い距離から投げる。

初体験のメジャー式フリー打撃で、間合いの差を強く感じた。超のつく近距離で、しかも監督、コーチが小さなテークバックでどんどん投げ込む。「試合の間合い=実戦」がフォーカスされ、練習から再現されていた。

毎オフ打撃を解体し、一から作り上げるのが筒香のスタイルだ。持ち前の柔軟さが、空振りをプラスに捉えさせた。「シーズン中、本当に完璧だったというホームランは1本か2本。野球は確率のスポーツといわれているので、それ以外の打撃が大事。思うようなイメージで打てないことの方が圧倒的に多い」。

自分なりにメジャーの「間合い」を想定し、準備を重ねて海を渡った。感度の高いセンサーが最初の1球で刺激され、徐々に間合いをつかんでいく。初のフェンスオーバーまでは21スイングを要した。だが最後は7スイングで4本の柵越え。ハイレベルの対応力で周囲を納得させた。

「15球目を過ぎたぐらいから間合いが合ってきた。その合わせる作業は、試合でも絶対にやる。例えば1球、ファウルを打った場合、想定内なのか想定外なのか。想定外の場合は何かを変えなければいけない。日本のように距離があって、打撃練習で気持ちよく打てる状況だと、練習中にその合わせる作業がない」

ベースボールと野球。比較しながら、丁寧に差を埋めていく-。メジャー1年目、やるべき作業が決まった。

他の選手の打撃を見ても、日米での差があった。日本は、打者のタイミングに打撃投手が合わせてくれるケースがほとんど。「自分主導で間合いが取りやすいから、いい打球なのか、ヒットコースに飛んでるか、分かりやすい。でも、メジャーは自分の間合いじゃない分、打球の質も試合に近い感じがする」。どちらが正解ではない。ベースボールは、実戦ありきの習慣が細部まで染み付いている。

オープン戦に入ると「18・44メートルの攻防」で日米の差を痛感する。【為田聡史】(つづく)

   ◇   ◇   ◇

筒香は3月25日にレイズの本拠地・フロリダ州セントピーターズバーグから一時帰国した。日米ともに閑散とした空港。異様な光景だった。帰国後は検温と体調管理を徹底。日本のプロ野球同様、メジャーの開幕も先行きが見えてこない。「いつ開幕するのかは僕たちがコントロールできるものじゃない」と現実だけを受け入れる。

国内で単独練習は「調整」という概念を排除した。ここまでの野球人生は、常に目標日から逆算して状態を上げたり、整えたりしてきた。だが、こんなに長期間、公式戦から遠ざかったことはない。「調整だと思うとメンタルの維持が難しい。来年も再来年もプレーしたい。もっとうまくなるように、成長できるような練習をする」。今、解決すべき問題は新型コロナウイルスが最優先だ。終息した先、さらにその先に続く景色のために鍛錬を積む。