社会人野球のクラブチーム「ウイン北広島」に、強力な戦力が加わった。元巨人の最速147キロ右腕、森和樹投手(22)が、11月に新加入。巨人時代の親友で13年にセ・リーグ最優秀中継ぎを獲得したスコット・マシソン投手(31)との約束を実現するため、プロ復帰の夢を視野に入れ、新天地で本格始動した。高校時代、日本ハム上沢直之投手(21)とともに「千葉ビッグ4」と呼ばれた剛腕が、戦いのマウンドに戻る。

 千葉・市柏高時代、日本ハム上沢と並び「千葉ビッグ4」と称された元巨人の森が、北海道のクラブチームで再出発する。11月にウイン北広島に新加入。今月に入ってブルペン投球を再開した。身長185センチの恵まれた体から投じる直球は最速147キロを誇る。巨人退団後、1年のブランクを感じさせない投球で、チームメートの熱視線を浴びた。

 11年、巨人から育成ドラフト1位で指名を受け、プロの世界へ飛び込んだ。1年目から苦しんだ。制球を意識するあまり投球フォームを見失い、直球の球速は121キロまで落ちた。コーチ陣から横手投げ転向を打診され試行錯誤。その後、復調の兆しは見えず、支配下登録されることもないまま、プロ生活を終えた。

 昨年10月に戦力外通告を受け、選手として一区切りつけた、つもりだった。東京都内で警備員などをして働いていた。「何もしていない自分に、むかついた」。まだ、22歳。夢を諦めるには、早すぎないか-。そんな時、知人の紹介でウイン北広島の存在を知り、入団テストを受けた。「元プロというレッテルがプレッシャーだった」と1歩を踏み出せずにいた。「気楽に野球を楽しむつもりでおいで」。中村薫監督(60)の言葉に背中を押された。

 夢が、ある。プロ1年目の春季キャンプで親しくなった、巨人マシソンとの約束だ。今回、選手復帰を決めた時も、誰よりも喜んでくれた。退団時「いつか、また、同じチームでやりたい」と言ってくれた13年リーグ最優秀中継ぎの親友から譲り受けたグラブを手に、練習に励む。「元プロの先輩には『1度ドロップアウトしたら(プロ復帰は)無理だよ』と言われたけど、自分の心は動かない」と、将来的なプロ再挑戦を視野に入れている。

 チームは来季、4年ぶりの全日本クラブ選手権出場、そして初の都市対抗出場を目指す。「このチームには感謝している。力になって、恩返しがしたい。その中で、プロを目指せるところまで行けたら」。来年のシーズンインが、待ち遠しい。【中島宙恵】

 ◆森和樹(もり・かずき)1993年(平5)6月23日、千葉県野田市生まれ。小2で野球を始め、市柏高時代は高2秋、高3春の県16強が最高成績。11年育成ドラフト1位で巨人に入団。13年に2軍で公式戦デビューし1勝も、1軍出場はなし。現在は鉄鋼事業などを展開する「旭イノベックス」に勤務しながら、野球を続ける。185センチ、93キロ。右投げ右打ち。