西武が今秋キャンプを異例の「国内3カ所制」で行い、うち1カ所が静岡・伊豆になることが6日、分かった。7日には球団正式に「伊豆キャンプ」の実施を発表。どんな場所? 西武とはどんな縁? 担当記者がつづる。【金子真仁】

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“いずっぱこ”の愛称で知られる伊豆箱根鉄道(西武グループ)の終着駅、修善寺駅を降りると、もうずいぶんと山が近い。

このあたりの小学校の一部には、横断歩道を渡り終えると立ち止まり、停車中の運転手に一礼する文化もあるようだ。そんな人情ある山里を進み、急なヘアピンカーブを何度かこなすと、海抜250メートルに開けた土地「中伊豆ワイナリーヒルズ」がある。西武がキャンプを行う「伊豆志太スタジアム」もこの一角にある。

志太は「しだ」と読む。給食事業やカラオケ事業で知られるシダックスの創業者・志太勤氏(故人)が切り開いた。生前、こんな話を聞いた。

「地元にワイナリーを作るの夢だったんです。サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジの先にあるソノマ、ナパ…あのあたりをモデルにして」

事業拡大に奔走する合間に伊豆各地を巡り、中伊豆のこの台地に決めた。「理想の場所に非常に似ていたんです。山だけど、海からの風がサーッて吹いて来て。昼と夜の温度差もある。理想の場所でした」。富士山も拝める土地だ。

やがてシダックス野球部を社会人野球に参戦した志太氏は、ここに春季キャンプを誘致。全面人工芝の球場はやがて志太氏が提唱した「Kボール」の中学生大会の聖地にもなった。軟球と硬球の中間球で、中学3年生にとって高校野球への導入もなる貴重な大会で、西武でも高橋光、甲斐野、豆田、滝沢らKボール経験者は多い。

今回は11月4日から17日間の期間で伊豆キャンプが行われる。敷地内にある急坂(けもの道を含む)はかなりの斜度で、中村剛らも経験した大阪桐蔭高校野球部の名物「山ラン」に使われる生駒山系の山道のそれと近いものがある。長いシーズンを乗り切るべく、若獅子たちの下半身強化にはうってつけと言える。

近隣へのシャトルバスが出る場合もあるものの、基本的にはバス便も少なめな場所だ。7日時点でファンへの公開有無は発表されておらず、未定のようだ。今後の発表になる。

ただもし一般公開になった場合、伊豆半島は言うまでもなく魅力的なエリアだ。玄関口にあたる三島駅からほど近い「柿田川湧水群」(清水町)の池の、ライオンズブルーに負けない青さは感動の域。志太スタジアムから車で30分ほどの駿河湾沿いにある「伊豆・三津(みと)シーパラダイス」も西武グループの人気観光地だ。イルカも待っているし、子どもたちは漁獲から食卓までアジになりきるコスプレ体験をすることもできる。

伊豆長岡温泉の高級旅館「三養荘」や、世界的に有名な川奈ホテルゴルフコースも西武グループが運営する。伊豆箱根鉄道のレオデザインのバスもあちこちを走る地だ。もともと、79年の西武ライオンズ初のキャンプは、伊豆半島南端の下田市で行われた歴史もある。縁は深い。

なお記者個人としては、奥石廊崎のユウスゲ公園の壮大さや、伊東市「スイートハウスわかば」の丸っこいソフトクリームやホットドッグを推しておきたい。【西武担当・金子真仁】